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《ネタバレ》 やっぱりこのお話の核心部分はキャロルとロシア人外交官との会話にあるんでしょう。原作は元々「共産主義の脅威」を描いたものらしいですが、今の時代にこういったストーリーを持ってくるとまた別の意味合いに見て取れる。個人的には「情動と理性」の戦いがテーマなのかなと思いましたね。人間の頭脳は、情動を掌る原始的な脳に大脳皮質が覆いかぶさる様に出来ている。数百万年前から進化し続けてきた人類も、ここ数十万年は身体の進化がストップしているそうな。それで人類はどうしたかというと、今度は自分の身の回りのものを進化し始めた。そして現代社会。極度に合理性や抑圧が支配する世界では、人との繋がりは阻害され、人間性は喪失する。養老孟司風に言うと、都市に住むというのは「脳の中に住む」ということ。自然が「融通の利かない世界」であるなら、都市は「全て融通が利かなければならない世界」だといえる。その先にあるのは、全てがコントロール出来るという人間の錯覚であり、それはこの作品では「争いごとの一切無い社会」ということで表されてる。現に都市に住む現代人というのは、この映画でウィルスに感染した人たちの様に、無表情で、無関心で、個人は大きな社会の一構成要素になってるでしょう。そういう「合理性=都市=コントロール」が「情動=自然=大らかさ」を呑み込もうとする、そういうお話なんだと思いました。ただ、そういう割としっかりしたテーマ性を保持していながら、作品自体はこじんまりした在り来たりのハリウッド・スタイルで落ち着いてしまってることが僕としては少々残念に感じるし、ラストでロシア人外交官の台詞をまた繰り返すのは作りとしてちょっとくどいように思える。
【あろえりーな】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-09-22 22:13:38)(良:2票)
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