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《ネタバレ》 この作品の一番の見所は、なんといってもメリル・ストリープの演技でしょう。鉄の女と言われたマーガレット・サッチャーを見事に演じきっている。ただ、政界を引退し、夫の幻覚を見る寂しげな老婆となったサッチャーが過去を振り返るという展開なので、全体的に物悲しく、また一つ一つのエピソードが深く掘り下げられていないと感じる。サッチャーの場合、政界という「男の世界」にただ一人飛び込み、史上初の女性首相になるまでの、「女性」としての大変さと、疲弊していたイギリスの経済と財政を立て直すため、多くの反発を受けながらも果敢に政策を実現していった「改革者」としての大変さの2つがあると思うのだが、どうにもさらっとしたタッチで表面だけなぞっているような感じで真に迫ってこない。そしてまた、夫や子どもたちとの描写も乏しいので、家族劇としても物足りない。唯一ぐっときたのは、フォークランド紛争での決断の時。彼女は困難な決断をし、数十人ほどの犠牲が出るのだが、遺族宛に自ら手紙を書く、その時の心情を察すると胸が熱くなる。あるいはまた、デモに襲撃され、罵声を浴びせられるシーン。心中察するとさぞ辛かったはず。サッチャーが発する言葉の一つ一つが素晴らしい。現実の様々な問題を前にすると、理念が腰砕けになる政治家が多い中、彼女はずっと理念を曲げずに、全ては国益を第一に考え政策を決めていった。その姿勢は世界中の政治家が見習いたいものだ。勿論、それ故に頑固者だと揶揄されもしただろうが、彼女のような人でなければ、困難な改革を断行するのはまた不可能なことであっただろう。
【あろえりーな】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-09-19 23:29:31)(良:1票)
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