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性格俳優として、また名脇役として近年とみにその重責を担っている感のあるW・H・メイシーの最新主演作。若くもなくハンサムでもない、何処にでも居そうなごく普通のオヤジ、といったキャラのメイシーの名演がひときわ光彩を放つ作品だ。潜水艦あるいはUボートをテーマにした戦争映画も少なくないが、本作はその中でもとりわけ小粒で、いかにも低予算で作られた作品だというのが観ていて良く分かる。それは極限状態に追いつめられた男たちの人間ドラマに焦点が絞られている為であり、ハリウッドお得意の大掛かりな戦争スペクタクルなど敢えて必要としていないからとも言える。戦争映画におけるアメリカ人が描くドイツ人とくれば、ヒットラーに代表されるような、情け容赦のない極悪人といったイメージが相場だが、この映画に登場するドイツ人はごく普通の人間として、そしてあくまでもアメリカ人と対等に描かれている。従って本物のドイツ人の俳優を出演させて、話す言葉もドイツ語なのである。これはロシア人を演じようとドイツ人を演じようと、アメリカ人の俳優を使ってしかも英語で喋らすという、ハリウッド悪しき伝統から見れば、対立する両国を際立たせると言う意味において、至極当然の配慮だと思う。だからこそ、祖国を愛し、大切な人を愛し、生きて帰りたいという男たちの願いは、国は違えども同じであるというテーマがより鮮明に浮び上がってくる。とりわけ機関工を象徴として描かれたように、互いに現場で働く者同士、言葉が通じなくとも血の通った人間として気持ちは通じ合い、やがて友情は芽生えるものだという主張は、痛いほど伝わってくる。どこかの国の某戦争映画のような、余計な泣かせを演出するわざとらしさがないのも好感が持てる。また、閉ざされた空間内で伝染病が蔓延していくエピソードには真実味があり、敵国との戦いとはまた違った、より身近な恐怖を感じさせサスペンスを盛上げていく。それにしても、ここに描かれる男たちには本当のカッコ良さがあり、テーマである男の友情がラストシーンでシンボリックに描かれ、名場面ともなっている。 そう言う意味でも、本作はまぎれもなく男の映画だと言える。
【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-05-12 18:13:43)
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