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レビュー情報
基本的なプロットは同じでも、描かれる舞台と作り手が違うだけで、こうも印象が変わるものかと、改めてハリウッド映画の底力と魅力を感じさせられた作品だ。ニコルソンのディモンとの親子のような師弟関係は、冒頭部分にさり気なく端的に描かれているのに比べ、ディカプリオへの信頼関係の成立ちへのプロセスには、かなりの時間を割いているのが良く見てとれる。スコセッシが目指したのは、“いつ正体がバレるか”といった、潜入捜査における手に汗握る“ヒヤヒヤ感”を描きたかったからに他ならず、そのあたりが希薄だったオリジナルに対し、難局を次々とかわしていくスリルと、ディカプリオの精神的な苦悩をポイントにしている以上、それなりの時間をかける必然性があったという事なのである。それは、マフィアと警察内部へと互いに潜入しているとは言え、ディモンの置かれた立場に対し、正体がバレることは死を意味するディカプリオを主体にドラマの興趣を盛上げていくのは当然だからだ。この囮捜査モノは、ハリウッドの伝統的な得意分野とも言え、そのあたりはさすがに面白く創られている。また、人間関係で言えば、アジア映画のひとつの特徴とも言える女性を話の中心に添えて物語を膨らませ、男女のエモーショナルで濃密な時間を描出したオリジナルに比べ、ハリウッド版はいかにも乾燥した土地柄の如く、そのあたりの味わいは実に淡白で、ラストへのお膳立ての為だけに存在しているようにすら感じる。むしろ警察内部での対立や、ギャング仲間の疑心暗鬼に興味を繋いでいくあたり、どこまでも男の映画だと言う事である。本作のディカプリオは、頭脳明晰だが経験の浅さからくる恐怖心や焦燥感を、他の捜査官などのヴェテラン組との対比でより際立たせ、病的なほどの熱演で体現している。オリジナルに心酔している人には受け入れ難い作品のようだが、結末はともかく、大筋で同じでありながら、それでも興奮させられる映画など、そうザラにはない。メリハリの効いたストレートなアクション映画が好みの私などは、むしろこちらに軍配を挙げたい。それほど良く出来た作品だと思う。
【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-03-18 18:05:53)(良:2票)
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