昭和歌謡大全集 の ドラえもん さんのクチコミ・感想

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昭和歌謡大全集 の ドラえもん さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 昭和歌謡大全集
製作国
上映時間112分
ジャンルアクション,コメディ,犯罪もの,小説の映画化
レビュー情報
本作は或る通り魔殺人に端を発し、その復讐を果たす為、おばさんグループと若者グループとが死闘を繰り広げ、その挙句の果てにアッと驚く結末が用意されているといった、まさに過激で奇想天外な現代の寓話だと言える。とは言うものの、その日常生活は極めて現実的に描写され、再三出てくる食事のシーンなどでは、おばさん対若者といった図式が明確に示されていて面白い。ここに登場する若者たちは、マニアックでオタクっぽく何処にでもいそうなガキとして描かれる一方、おばさんと言っても、樋口可南子を始め彼女たちの何と生き生きとして魅力的なことか。オンナを棄てた女にはとても見えないところがご愛嬌で、キャスティングの巧妙なところ。そして、この両陣営に協力するのが中年オヤジというのが共通項としてあって、この作品のキモでもある。中でも若者に荷担する原田芳雄演じる金物屋のオヤジが傑作。この男、女どもにはさぞや苦々しい思いで生きてきたのであろうか、若者たちにその武器使用の理由を聞くや、嬉々として武器を売りつけるという闇の武器商人といった趣で、中年男性の象徴として強烈な存在感を示している。(核爆弾を“原爆”と言わせるところなど、いかにもタイトルの「昭和」という時代を意識したセリフだ。)さて個々の殺戮シーンには、そのテクニックを強調されはしても思い入れというものは無く、あくまでも直截的であり即物的に描かれていく。特に“♪チャンチキおけさ”のシーンは秀逸で、昭和の流行歌が効果的に使われた一例でもあり、決して刺身の妻などではないのである。それにしても、お互いに絶命するまで限りなく続くこの復讐劇と昭和という時代とに、果たしてどれだけ深い意味合いがあるのだろうか。本作は村上龍が終始描いてきた現代社会の不条理さを映像化し、現実と非現実とが渾然一体となって醸し出され、閉塞感漂う世の中の鬱積したものの吐け口をひとつ間違えると、歯止めが利かないままとんでもない方向へ進んでしまうという事を、見事に提示した実に面白い作品となったわけだが、彼らの悪夢は昭和から平成になって、さらに深刻でより過激になっている事を再認識する必要がある。所詮、寓話などと笑ってはいられない、「今」とはまさにそういう時代なのだ。
ドラえもんさん 9点(2003-11-26 15:38:48)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2013-04-06007/スカイフォール5レビュー6.50点
ダイ・ハード/ラスト・デイ8レビュー4.83点
2008-05-06長江哀歌8レビュー6.04点
2007-10-18ツォツィ9レビュー6.26点
2007-07-29世界最速のインディアン9レビュー7.41点
2007-07-29ブラックブック8レビュー7.43点
2007-04-29ポセイドン(2006)7レビュー5.87点
2007-03-18ディパーテッド9レビュー5.98点
2007-02-25それでもボクはやってない10レビュー7.60点
2007-02-18単騎、千里を走る。6レビュー6.64点
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