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一つの国家が、紛争あるいは統合などといった歴史的なターニングポイントを迎えたとき、国民は如何にそれに向き合い、どのような行動をとって生きていくのだろうか。本作は東西ドイツの統合が、とりわけ旧東ドイツにとっていかに驚天動地の出来事であったかという事を、ひとつの家族を通して描いたものだが、遠い国の出来事と無関心ではいられないほど、当時の彼らの心情が痛いほど伝わってくる秀作である。物語の発端は、主人公アレックスがある日デモに巻き込まれ、間違って補導されてしまい、その事がショックで母親が倒れてしまう。長期に渡る昏睡状態の後、奇跡的に回復するが、その最中に東西ドイツの統合という歴史的変革が生じてしまう。自国に誇りを持って生きてきた母親にこの事を知られまいとするアレックスが、あれこれと捏造を重ね大芝居を打つ姿を、映画は終始コミカルなドタバタ調で描き綴っていく。咄嗟の判断でその場を切り抜けたり、皆で寄ってタカって嘘を演出するというのは、洋の東西を問わずコメディの常套的手法だが、アイデアが少々お堅いのはお国柄だろうか。けれども、いかにも嘘っぽいそれらを彼らが大真面目にやるからこそ、余計面白いとも言えるのだが。アレックスたちの涙ぐましい努力と徹底した行動力というのは、あたかも旧東ドイツを象徴しているかのようだが、果たして彼らのとった行動にどれほどの意味があったのだろうか。虚構のシナリオが大袈裟になればなるほど嘘っぽさも増していくという皮肉とその虚しさ。すっかり新しい社会環境に慣れきった彼らに比べると、母親のブランクが余りにも大きいという事なのだが、人間とは本来社会の変化の真っ只中にいると、その変化に知らず知らずのうちに順応していくものでもあると、映画は語りかけてくる。ところで、息子の嘘つまりはドイツの変化に気づかぬ振りをしてこの世を去った母親の愛情を、アレックスは果たして汲み取ったのだろうか。急激な社会の変化に翻弄されても、現実に背を向けることなく生きていく為の一歩を踏み出すこと、そして家族の大切さを彼女に教えられたような気がする。
【ドラえもん】さん 8点(2004-09-28 00:33:33)
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