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レビュー情報
宮崎アニメの作画の細やかで丁寧な仕事ぶりは作品数を重ねるごとに一段と磨きがかけられ、本作もその映像の際立った美しさは相変わらずなのだが、琴線をくすぐる程度で、心が大きく揺さぶられる程の感動をもたらせてはくれない。原因のひとつに、やはり物語性の希薄さと曖昧さが指摘できようか。しっかりとしたドラマツルギーがあればこそ、映像も引き立つというものなのだが、映像だけが独り歩きして、ドラマが付いて行っていないのだ。まるで宮崎自身が製作途中で飽きてしまい、その為に物語の構築が頓挫してしまったような印象を受ける。とりわけ映画の後半、物語性が後退していくに従って、映像の輝きが急速に失せていく。何より様々なキャラクターや状況設定が混沌かつ曖昧であること。そしてそれ以上に宮崎アニメのモチーフでもある魔法の驚きや神秘性への憧憬、そしてその必要性すらも曖昧さに終始している。何かが言い足りない。何かが描き足らない。まさに必要不可欠なシーンがカットされているような気がしてならない。(これが本当のディレクターズ・カットと言うのかも知れない。)映像さえ美しければそれでいいのか・・・と、つい言いたくなる。しかし世界的に大成功を収めている宮崎アニメに、我々はいつからそんなクオリティの高さばかりを要求するようになったのだろうか。今年八十歳になる母親に本作を見せてやると、「話はよく解からなかったけど、映像が美しくて心が洗われるようだった。」と喜んでくれた。それいいのだと思った。
【ドラえもん】さん [映画館(吹替)] 7点(2005-05-19 18:03:40)
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