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イタイ。映画がイタイのでなく、自分の中のイタイ部分を露にされたような感じ。オープニングのガキがいい例で、雪原に女が横たわる『ファーゴ』を彷彿させる深刻ぶった画が映し出されたと思ったらガキが出てきて胸をまさぐる。いかにも深刻をスカした山下節なのだが、それ以上に現実に目の前に女の死体があるというあり得ないシチュエーションをけして夢見なかったとは断言できないというイタイイタイところを突いてくるのだ。と、告白するのも恥ずかしいのだが、この映画は全編でこういった内なるイタイ部分を露呈させてゆく。「やったのか」と詰め寄る息子に対しはぐらかしながらも「あれはやったって言うのかなあ」なんて言葉を吐いてしまう父。その父にえらそうに怒鳴りつける息子だって自分もやってることがバレてないと思ってるから大きな態度でいれる。バレなきゃいいの典型がひき逃げ。あるいは自分のやましさを隠す話のすり替えや責任転嫁を巧みにこなす変なカップル。カルト性から万人受けに徐々に垢抜けてゆく山下作品の展開から原点回帰したかのようなシュールさを持っているが、実は初期作品以上にウケを狙わないキツイシュールさで覆われている。それでもどんなに辛く厳しい人生も喜劇にしてみせる、その構成自体が人生賛歌となっているようにも思えた。単なる意地悪かもしれんが。
【R&A】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-09-16 14:59:11)
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