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吃音症の王様がスピーチの練習をする、というだけのオハナシで、これといった大きな事件もないのに、親しみやすい娯楽作品に仕上げている点はまず、さすがだとは思います。背景の美術にもこだわりを見せながら、会話のシーンではあえて表情のアップを多用し、最後に画面を引いて背景を見せつけるあたりも、自信の表れなんでしょうかね。そしてもうひとつ、表情のアップを映画の主軸に置く理由としては、観る者を登場人物へ感情移入させようという計算も働いていそうです。だもんで、観終わって、ああよかったね、ってことにはなるのだけれど、しかし何か物足りない。ここには、「表情」や「人のよさ」はあるけれど、肝心の「行為」「行動」ってのがあまり描かれてなくって。役者の表情ってのは、一見、説得力があるように見えるけれど、映画に本当に説得力を持たせ、印象深いものとするのは、そこに盛り込まれるエピソードの方にこそあるんだと思うのです。本作はその点、少々弱い作品、という気がいたします。だいたい、最後のスピーチの場面で感動するとしたら、スピーチする姿に感動しているのやら、ベートーヴェンに感動しているのやら、知れたもんじゃないですし。あと、そうそう、どうしてこうも、ウィーン拠点の作曲家の曲ばかり挿入するんですかね、何とかイギリス音楽から見つくろえないもんですかね。こういうところがイギリス人の度量の広さと言えなくもないですけれども。
【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-04-21 23:41:32)
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