楢山節考(1983) の onomichi さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ナ行
 > 楢山節考(1983)
 > onomichiさんのレビュー
楢山節考(1983) の onomichi さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 楢山節考(1983)
製作国
上映時間130分
ジャンルドラマ,時代劇,小説の映画化
レビュー情報
深沢七郎の原作小説は、おりんという土俗的人生に絶対的従順さをもつ女性の原日本的な奥深さを描いており、その奥深さを信とすることによって現代的な自堕落さの象徴であるけさ吉が救われるという物語である。つまり、おりんがけさ吉という壊れを抱え込むという現代的な問題をテーマとした小説でもあるのだ。今村昌平の「楢山節考」は知られているように深沢七郎の同名小説と「東北の神武たち」をミックスした作品である。「東北の神武たち」とは、奴隷的な境遇である東北地方の農家の次男三男坊たちを総称したもので、この物語の主人公は利助である。利助をこの映画で辰平の弟として闖入させ、倍賞美津子演じるおえいや女性たちとのエピソード、あの残酷な村八分の場面などに「東北の神武たち」の物語を見え隠れさせている。その昔、ある評論家は「東北の神武たち」を「楢山節考」に比べて数段落ちる駄作と称し、「生死の問題と性欲の問題との人生に占める位置づけを計算まちがいした作品」と酷評した。確かにこの映画にみられるちぐはぐさはそういった2つの作品を一緒にしているところからくるのかもしれない。しかし、本当は、この2作品が同根の物語であり、利助こそが「楢山節考」のおりんであり、けさ吉でもある人物像なのである。その辺りで、利助の描き方は中途半端であり、せっかくシチュエーション的に融合可能な2つの物語を単なる日本的な土俗性に回収させて終わらせているのが残念だ。冒頭に記したテーマこそ、この小説を「美しい」ものとしているのにも関わらず、やはり土俗的エピソードの積み重ねがこの作品のもつ現代的意味合いを著しく損ねていると感じる。確かに映像的にはそれなりに人間の原初的な力強さを描いているが、その作品の本質的なテーマはその影にすっかりと隠れてしまっているのである。
onomichiさん 7点(2004-06-19 11:21:59)
onomichi さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2025-01-18惑星ソラリス10レビュー7.02点
2025-01-16華の乱8レビュー6.33点
2025-01-16大いなる幻影(1937)9レビュー7.71点
2025-01-16こわれゆく女9レビュー7.46点
2025-01-14別れる決心9レビュー8.75点
2025-01-14PLAN 758レビュー6.83点
2025-01-14アバター:ウェイ・オブ・ウォーター9レビュー6.74点
2025-01-14博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか9レビュー7.69点
2025-01-14陪審員2番9レビュー9.00点
2025-01-14ストーカー(1979)9レビュー7.48点
楢山節考(1983)のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS