ショート・カッツ の onomichi さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > シ行
 > ショート・カッツ
 > onomichiさんのレビュー
ショート・カッツ の onomichi さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ショート・カッツ
製作国
上映時間189分
劇場公開日 1994-10-08
ジャンルドラマ
レビュー情報
傑作である。レイモンド・カーヴァーの小説作品といえば、日本では、村上春樹訳としてよく知られている。その村上春樹がカーヴァー作品について、「人間存在の有する本質的な孤独と、それが他者と関わりあおうとする際(あるいは他者とかかわりあうまいとする際)に生じる暴力性が重要なモチーフ」と解説しているように、カーヴァーは、その原初的な孤独と暴力性に常に囚われる下層労働者たちの荒涼とした悲哀を描く作家である。しかし、村上訳でカーヴァーに接する僕たちにその辺りのニュアンスを掴むのはなかなか難しい。村上訳から漂う軽妙な風がまさに都市的な悲哀を僕らに吹き込んでくるからである。個人的には、その悲哀の本質<弱さ>は変わらないと思うが、カーヴァー作品で描かれる下層労働者たちの絶対的な「どうしようもなさ」が圧倒的な存在感をもって僕らに伝わっているかと言えば、なかなかそうは捉えられないところがあるだろう。それに比べればアルトマンの描く「ショートカッツ」は実にカーヴァー的<原カーヴァー的>であると僕には感じられた。画面に漂うあまりにも明瞭な寒々しさ、絶対的な孤独を自明とした人々の生活とその荒涼感。映画としては、カーヴァーのいくつかの短編を繋ぎ合わせた構成となっていながら、そのエッセンスをうまく統合することにより、カーヴァー的世界を忠実に表現していたように思える。著名な役者たちも各々の無意識的な「ボロボロさ」加減をうまく演じていた。上空を旋回するヘリコプターが煽る硬質な不安感の中、最後の地震のシーンは人間の根源的な衝動、漠とした悪夢を見事に映し出す。僕は映画を観終わったあと、しばらく間、悪夢の続きの中をくらくらしたものだ。
onomichiさん 10点(2004-06-10 00:47:32)
onomichi さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2025-01-18惑星ソラリス10レビュー7.02点
2025-01-16華の乱8レビュー6.33点
2025-01-16大いなる幻影(1937)9レビュー7.71点
2025-01-16こわれゆく女9レビュー7.46点
2025-01-14別れる決心9レビュー8.75点
2025-01-14PLAN 758レビュー6.83点
2025-01-14アバター:ウェイ・オブ・ウォーター9レビュー6.74点
2025-01-14博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか9レビュー7.69点
2025-01-14陪審員2番9レビュー9.00点
2025-01-14ストーカー(1979)9レビュー7.48点
ショート・カッツのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS