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《ネタバレ》 常に場面の意味、セリフ、色彩、アイテムを記憶に留めながら観ないと物語を理解し損ねる。観ることへの緊張感を自律的に強いる映画。観終わってからもラストの意味を暫く反芻せざるを得ない。その意味について思いを巡らし、それを確かめる為にもう一度観たくなる。誰でも容易に理解出来るエンタメ映画ではなく、様々な伏線回収とその解釈を要する難解な文芸ミステリー作品、、、でもないように思える。(敢えて一般的に語られるイメージを記してみた)
この映画は、純粋に恋愛の本質を描こうとしている。ストーリーの中で彼らが何時、どの様にそれに囚われたかということ。恋愛感情が生まれ、気が付けばそれを中心に様々な状況が振り回される。そこにのみ思いを巡らし、彼らの目と表情と声の響き、手と脚の動きに注目していればそれでよいとも思える。そうすれば、何のことはない、とてもシンプルに恋愛を描いた物語だと分かる。恋愛は自意識の劇であり、鏡であること、そしてその究極には不可能性という可能性への期待があり、それが刹那に超越され、持続しない。 「彼は深くそして熱烈に恋している、これは明らかだ。それなのに、彼は最初の日からもう彼の恋愛を追憶する状態にある。つまり、彼の恋愛における関係は既に全く終わっているのである」(キルケゴール) お互いに芽生えた強迫観念ともなり得る恋愛という外部の力、にも関わらず自意識とも言える内なる感情。それを追っていくことで、ラストまで一直線に流れていく。ストーリーに一本筋の通った純粋な恋愛映画。胸にストンと落ちる。こう言って語弊がなければ、これは反世界、反共感の人間性、君と私が現代に生きる可能性を描いた作品なのです。ちなみに増村保造の『妻は告白する』との類似性も話題となっているが、ラストのタン・ウェイと若尾文子の選択に対する感情が決定的に違う。そこがまた面白いかも。 【onomichi】さん [映画館(字幕)] 9点(2025-01-14 23:08:37)★《新規》★
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