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「真実」というフレーズを謳うものほど、実のところ“つくりもの”が多いのではないかと、常々思っている。
この「電車男」についても、そういう疑いは拭えず、一体どこまでを“リアル”と捉えるかは微妙な部分があると、思う。 書籍化、テレビドラマ化、映画化、さらには舞台化と、ありとあらゆる媒体において「企画化」されていく様を見て、そういう印象は益々膨れ上がる。 ただ、リアルかどうかということを度外視するならば、このストーリー自体は結構好きだったりはする。 根っからのヲタク野郎が、ふいな出会いから文字通り“高嶺の花”なお嬢様に恋をするという着想は、ベタで古典的であると同時に、非常に現代的な要素が巧く合わさっている。 「ネット」という手法で、主人公が見ず知らずの無数の「他人」たちによって、支えられ、励まされるという構図にも、ある種奇跡的なほどの成功要素が加味されていると思う。 でも、なかなか珍しいことではあるが、この映画版よりもテレビドラマ版の方が、随分「映像化」ということについて完成度が高いと思う。 主演の山田孝之の根っからの「暗さ」が、一層に拍車をかけていると思われるが、映画全体がとても「重い」感じがする。ヒロインの中谷美紀はもちろん巧い女優だが、そういう女優としての厚みが、また必要以上に「重い」印象を与える結果になっている。 全体的に軽くアクティブな作りだったテレビドラマ版に対し、映画版は少々趣向を変えて“リアリティ”を狙ったのだとは思うが、ストーリー自体のテンションとしては、ドラマ版の雰囲気の方がふさわしかったのではないかと思う。製作費もドラマ版の方がずいぶん潤沢だったんじゃないかと思う。 まあ詰まるところ、某キー局お得意の「企画映画」の枠を越えないことは確かなことだ。 【鉄腕麗人】さん [地上波(字幕)] 5点(2006-09-16 23:29:30)
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