羊の木 の 鉄腕麗人 さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ヒ行
 > 羊の木
 > 鉄腕麗人さんのレビュー
羊の木 の 鉄腕麗人 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 羊の木
製作国
上映時間126分
劇場公開日 2018-02-03
ジャンルドラマ,ミステリー,漫画の映画化
レビュー情報
何の変哲もない寂れた港町を舞台に、主人公の心象にまとわりつくような「疑心」が、“六者六様”に姿を変えて終始渦巻く。
信じることは罪で、愚かなことなのか。拭い去れない疑心暗鬼の渦に放り込まれた平凡な主人公の平凡な“感覚”は、そのままストレートに我々観客の心象と重なり、彼と同様に疑心と恐れに押しつぶされそうになる。

観終わって振り返ったならば、非常に地味で表面的には色の薄いサスペンス映画だった。
だがしかし、その色の薄さはあくまでも表層的なものであり、薄皮一枚のすぐ奥には、様々な色が深く入り混じったような“黒”がべっとりと塗りたくられていた。

ただ、だからと言ってこの映画は暗く陰鬱なわけではまったくなく、むしろカラッと乾いていて、時にコメディさえも携えている。
それはこの映画がまさしく、おぞましくも滑稽な「人間」そのものの深淵を描いていることの証明であり、べっとりと塗りたくられた黒色は、よく見れば見るほど色々な「色」を垣間見せる。

吉田大八監督の映画話法は益々冴え渡っており、堂々と、おかしな映画世界を見せつけてくる。
「面白い映画」とはまさにそういうものであり、「流石」の一言に尽きる。

出演する俳優たちもみな素晴らしい。
“6人の元殺人犯”を演じた俳優たちは、見事に六様の“曲者”ぶりを放っていたが、中でも特筆すべきは、優香のエロさと、松田龍平の禍々しさだろう。
両者とも自らの内なる怪物のような欲望に抗いきれずに苦悩しつつも、ついには享受し、神か悪魔の如き達観した眼差しが印象的だった。
そういった曲者たちに対峙する凡庸な主人公を演じた錦戸亮は、アイドル俳優としてはある意味異質な“輝きの薄い存在感”が特徴的で、これはまた素晴らしかったと思う。

吉田大八監督作品らしい突き抜けた暴走ぶりは今作のラストにおいても顕在で、このリアリティラインに対してのアンチテーゼが、この映画のテーマを際立たせ、荒んだ現実社会に対して大きな疑問符を突きつけているようだった。

「信じることは罪か?」
今この世界で、その問いに完璧に答えられる人などいるのだろうか。
鉄腕麗人さん [インターネット(邦画)] 8点(2019-11-02 15:30:15)
鉄腕麗人 さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-03-24DUNE デューン/砂の惑星 PART28レビュー6.60点
2024-03-10アルキメデスの大戦8レビュー6.60点
2024-03-02アラジン(2019)7レビュー7.24点
2024-02-24マーベルズ6レビュー4.87点
2024-02-23別れる決心9レビュー8.66点
2024-02-12かがみの孤城6レビュー7.64点
2024-02-12インクレディブル・ファミリー5レビュー7.20点
2024-02-04テレフォン7レビュー5.37点
2024-02-03悪い奴ほどよく眠る8レビュー7.35点
2024-01-27哀れなるものたち10レビュー7.64点
羊の木のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS