ミツバチのささやき の BUNYA さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ミ行
 > ミツバチのささやき
 > BUNYAさんのレビュー
ミツバチのささやき の BUNYA さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ミツバチのささやき
製作国スペイン
上映時間99分
劇場公開日 1985-02-09
ジャンルドラマ
レビュー情報
自然光だけ撮られたらしい、くっきりと陰影がつき少しざらついた画質に、ナチュラルにくすんだ色の大地、建物、人々…カスティーリャ地方の荒涼とした風景とあいまって、日本人がスペインとか南欧という地名に、勝手に抱いてしまう「快活で陽気な」イメージを裏切ってゆきます。僕はそれだけで、このフィルムに信頼を寄せてしまいます。どこか内乱後の人々の心象風景とも思える「色」を喪失してしまった世界に、唯一暖色を添えるのは、ハチミツの色。ハニーゴールドというのでしょうか。そのやさしい光は、アナとイザベルの寝室に差し込んでいます。そこだけ陽だまりが出来たように、まるで外の荒れ果てた現実世界と寝室を遮断して、幼い彼女らを守っているかのよう。僕は自分の幼少期と重ねあわせ始めてしまいます。当時を過ごした家、庭、周囲の風景、学校…そうなんだ、確かに僕にもやさしさに守られていた少年期があったのだなぁと。でも、僕もそうであったように、あのハニーゴールドの窓を自ら開け放って、そこから抜け出る日が近いようです。アナは自分自身と自分のいる世界を見つめるかのように、その大きな黒い瞳をさらに広げる。その覚醒前夜の最後の光を宿した黒い瞳に、はかない美しさを見出します。その一瞬をフィルムにしっかり留めている。ハニーゴールドは消え去り、夜明けの青白い光の配色をともなって、アナに幼少期の終わりを暗示し始める。アナは外の世界、現実の世界へと飛び出してゆくのですね。田園風景の中を地平線に向けて一本の汽車の鉄路が続く…アナはいつの日か、汽車に乗って村を出てゆくのでしょうか、まるでミツバチのように、自由に国中を飛び回る日が来るのでしょうか。内戦も喪失感も知らない、新しい純粋な子供たちが新しいスペイン中ですくすく育っている。すくすく育てよ、穢れなき若い命よ…静かな作風の中に、監督の激しいまでの自国への愛と願いが込められているように思います。ああ、アナたち、この国の明るい未来を予見させるに余りある。
BUNYAさん 10点(2004-03-15 00:10:49)(良:3票)
BUNYA さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2007-05-03バベル10レビュー5.41点
2007-01-02犬神家の一族(2006)10レビュー5.51点
2006-02-27深呼吸の必要10レビュー7.04点
2006-02-08THE 有頂天ホテル10レビュー5.80点
2004-09-21華氏91110レビュー6.14点
2004-03-15ミツバチのささやき10レビュー7.55点
2004-02-01ジェイコブス・ラダー(1990)10レビュー7.13点
2004-01-122001年宇宙の旅10レビュー7.33点
2004-01-11天国から来たチャンピオン10レビュー7.68点
2004-01-02ゴジラ(1954)10レビュー8.21点
ミツバチのささやきのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS