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主人公ジェイコブは預言者です。彼が戦場で負傷し見たもの…それは生き長らえたとしたら辿るかも知れない“もう一つの自分の未来”。だからヴェトナム帰還後のニューヨークのシーンは、「黙示録(もしくは予言)」と呼んだほうがいいかもしれません。その自らの黙示録の中で、彼は人間という愚かな生き物が犯す罪の深さを、知ることになります。ここに、このフィルムのテーマ「罪」と「許し」を見出します。戦争という大量殺戮の「罪」、そして戦争に乗じて行われた国家規模の「罪」、許しがたいほどの悲惨な真実が描かれてゆきます。しかし…その渦中にいるジェイコブは、それら全ての罪を「許す」のです。不安、恐怖、怒り、恨み、妬み、悲しみ。このような負の感情を強く抱いて死ぬと、怨霊だの自縛霊として現世に残るのだとといいます。だとすればこの地上には、無数の亡者たちの怨念に満ち溢れている、まして戦場は最たるもの、です。この現世こそ地獄なのだよ…映画は不気味に語りかけきます。そんなこの世にいれば、僕もふくめ人類全体の「罪」の感覚なんて麻痺してしまっている。「許し」などとは程遠い現実があります。でもジェイコブは許す。その心はどこから生まれてきたのでしょう?その鍵は彼の息子・ゲイブの存在。息子を幼くして死なせてしまったという「罪」の意識にジェイコブは苛まれるも、ゲイブは父親に対し、恨みひとつ残すことなく「許し」天国へと召された。許すことの大切さを身をもって知っていた。この「許し」こそが、こんな地獄のような現世を救済できる大きなパワーとなるんだよ…と優しく諭しているようです。魂の救済は「許し」であり「愛」。使い古され干からびた表現ですが、この物語の流れの中では、それは清らかな水のように、僕の心の奥底にまで染み込んでくるのです。マイナスの感情が、解き放たれてゆくような気分にすらなります。主人公の受難に比べ、自分は日常において何と些細なことで、負のエネルギーを日々蓄積させていることか…と。ジェイコブは“恨み”を残すことなく、息子に導かれ「愛に死ぬ」道を選ぶ。僕はクリスチャンではありません…が、温かい光に包まれ“ヤコブの階段”をのぼるシーンに辿り着く頃、途方もない安堵と多幸感をジェイコブと共有します。たいがいあふれ出る涙で、主人公の微笑みを湛えたラストシーンは、かすんでよく見れないままエンドマークを迎える…というのが普通です。
【BUNYA】さん 10点(2004-02-01 01:21:50)(良:2票)
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