| 作品情報
レビュー情報
世に「アメリカン・ニューシネマ」という言葉を登場させたという意味では文字通り歴史に残る作品。ケチな小悪党のクライドに飛び着いて行かざるを得ないほど、退屈し切ったボニーのけだるい眼差しが良い。独立小資本による低予算、スター不在、アンチ・ハッピーエンドの作品がハリウッドの大作志向に一石を投じたという点は評価できるが、残念ながらこの映画により突破口を開かれたニューシネマの後続作品からこれを上回る傑作が続出したために作品そのものの価値は埋もれてしまった。この作品がアメリカン・ニューシネマという一つのムーヴメントに果たした役割はあまりにも大きいが、アンチ・ハッピーエンドがそれほど衝撃的な珍しさを誇らなくなった現代においては、いささかストーリーの陳腐さは否定できない。実際には大女優シャーリー・マクレーンを姉に持つウォーレン・ビーティが道楽で撮ったままアメリカ国内ではほとんど葬り去られようとしていたところが、ヌーベル・バーグの下地を持つヨーロッパの観客の目にたまたま止まったにすぎないのがこの作品。初めの一歩、という意味では確かにエライが、実は不運にも埋もれてしまっただけでこの作品の代わりになる物はいくらでもあったんじゃないだろうか、と思う時がよくある。たとえばロジャー・コーマン&フレンズの当時の作品など。そうやって考えると、「普通に面白い」という以上の価値をこの作品に見出すことは案外難しく思えて来たりする。かの有名な「死のダンス」は、女優フェイ・ダナウェイの底力を見せつけられるという意味で一見の価値があるとは言えるのだが。
【anemone】さん 7点(2003-12-05 01:50:03)(良:1票)
anemone さんの 最近のクチコミ・感想
|