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ドラッグ、ロック、ロードムービーというアメリカン・ニューシネマの手法を借りて、この時代を自嘲的に振り返ることを許される最後の世代としてテリー・ギリアムが描いた最後のニューシネマ。アメリカ史上最大の汚点であり、人々が出口の見えない焦燥感の中を彷徨い続けたドラッグ・カルチャーの時代。ジミ・ヘンドリクス、ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリンがドラッグに命を散らして行ったこの時代が、アメリカにとっていったい何だったのか。多くの人が目を背けたいと願う、人々が現実から目を背けた時代に、真っ向から「NO」の答えを突きつけることが許されるのは、実際にこの時代を駆け抜けた一人だからこそ。その義務を、今このタイミングできちんと果たしておこうとしたテリー・ギリアムの、これは遺書代わりとも言える渾身の力作。ドラッグ漬けの二人の奇矯な振る舞いにお腹を抱えて笑いながらも、その行動の無意味さと非生産性には呆然とするばかり。「神の試作品」ゴンゾはあっさりアメリカにサヨナラを言い、祭りの後の静けさの中で抜け出し切れなかった過去を書き綴るラウルの姿をカメラは遠く俯瞰で捉える。アメリカの抜け出せなかった長いトンネル、その先には灯りが見えると誰もが信じたがっていた時代。無駄だったよね、で片付けるには人々の支払った代償は余りにも大きい。敢えて美しすぎる粉飾もせず、無駄を無駄として冷徹なまでに描き切ったこの作品のラストシーンに、涙が止まらない。
【anemone】さん 10点(2003-11-30 17:33:49)(良:3票)
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