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《ネタバレ》 田坂具隆監督の東映版に続いてこの松竹版も見てみた。東映版は夕子の悲しい生き様を中心に描いていたが、この松竹版は夕子と正順の関係を中心にしていて、東映版でやや唐突に感じた正順の登場だが、こちらでは冒頭から存在に言及があるなどして、自然に夕子と正順のラブストーリーとして見る事ができる作りになっている。しかし、東映版にあったような深みや、きめ細かさがなく、ひたすらあらすじを追ってるだけのテレビドラマのように見え、上映時間は東映版に対して10分ほど短いだけなのだが、まるでダイジェストを見ているように感じた。東映版の佐久間良子演じる夕子は悲しみの中にある純粋さも感じ取れる演技でとても良かったのだが、本作の松坂慶子演じる夕子にはそういったものが感じられず、言ってしまえば松坂慶子そのものに見えてしまい、とてもつらい境遇にいるように見えないのが残念。夕霧楼の仲間たちは一応はそれらしく描かれていて、東映版のようなアットホームな雰囲気はそれほど感じないのだが、女将さん役が浜木綿子(主人公の夕子、夕霧楼ときてこのキャスティングだと狙ってる感じがすごくしてしまう。)というのはいかにもなお母さん感がしすぎてなんか違うし、夕子の最初の客を演じるのが長門裕之というのも分かりやすすぎる感じがする。本作では正順の放火にいたるまでの寺でのエピソードももう少し踏み込んで描かれていたのは東映版の補足としては良かったと思う。しかし、肺病で入院している夕子を寺に連れ込んでのラブシーンは思わず突っ込まずにはいられなかったし、正順が燃え盛る寺に飛び込んで運命を共にするという最期であればいっそのこと正順を主人公にしておいたほうが良かった気がする。東映版で夕霧楼の仲間たちがいなくなった夕子を心配しているラスト近くのシーンがとても印象的だったのだが、本作ではそこは軽く流されてしまったのも残念で、東映版で印象的だった百日紅も登場せず、ラストシーンも趣が違い、あくまで本作は夕子と正順のラブストーリーであることを強調したものになっているが、やはり東映版のラストの方が良かったかな。あと、出演者に関しての見どころと言えば夕霧楼の仲間の一人であるお新を中原早苗が演じていて、松坂慶子との共演はある意味では見ものかもしれない。まあ、すごく下世話な話ではあるのだが。
【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 5点(2025-01-13 16:43:40)《更新》
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