陸軍 の イニシャルK さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > リ行
 > 陸軍
 > イニシャルKさんのレビュー
陸軍 の イニシャルK さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 陸軍
製作国
上映時間87分
劇場公開日 1944-12-07
ジャンルドラマ,戦争もの,モノクロ映画,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 田中絹代演じる母親が出征していく兵隊の列にいる息子をいつまでも見送るラストシーンが有名な木下恵介監督による戦意高揚映画。このラストシーンだけは何回も見ていた(ここだけ見ても泣ける。)のだが、最初から最後までちゃんと見たのは今回が初めて。戦意高揚映画ということもあり、ラストシーンだけが浮いていないかと心配だったのだが、そんなことはなく、戦意高揚映画でありながら、それを保ちつつも木下監督らしさはちゃんと出ていて、親子の情や、人間としての在り方がちゃんと描かれた映画になっている。高木(笠智衆)と桜木(東野英治郎)は事あるごとに喧嘩をしているが、互いの息子は戦友同士、だから父親同士ももっと仲良くしてほしいと高木の息子が訴え、その思いに応えようとする高木。このシーンは考えさせられるものがあるし、互いを思いやる心の大切さも感じることができる。高木と桜木の二度目の喧嘩のシーンで「日本は負けるかもしれない。」みたいなセリフがあり、(これが喧嘩の原因となる。)驚かされるのだが、おそらく、木下監督の本音であり、当時、日本の国民の中にもそういう人が少なからずいたのではないかと思えてくる。息子が戦地へ旅立った桜木がその安否を何度も何度も仁科大尉(上原謙)に尋ねるシーンも、建前上は天皇陛下に差し出した子だが、本音は息子のことが心配でたまらないという桜木の父親としての気持ちがストレートに出ていて、桜木に感情移入しないわけにはいかない。声高らかに反戦をうたってはもちろんいないが、ここにも木下監督の戦争に対する憎しみ、怒りといったものが、静かに、しかし、確実に感じられる名シーンとなっていて、ラストシーンとともに忘れることができない。そしてそれは、息子を戦地へ送り出す高木の妻 わか(田中絹代)とて同じことで、戦地へ行くことになった息子を喜んではいても、いざその日が来るとつらいから見送りには行かないという母。このあたりはこの母の葛藤がよく分かって非常に切ない。しかし、ラッパの音が聞こえると居ても立ってもいられず飛び出していくのはやはり人間としての母親の息子に対する愛や情の深さ、これをじゅうぶんに感じるし、群衆の中をかき分けて息子を追う母親の姿は、子を思う母親の気持ちがその表情を見ただけで痛いほど伝わってきて、やっぱりすごく感動させられるし、最後に手を合わせて息子の無事を祈る母親の姿を見て、こちらまでもが息子に無事に帰ってきてほしいと思えてくるのである。先ほども書いたが時局柄反戦をうたうことはできない。しかし声に出さなくても、戦争の愚かさ、悲しさを見事に訴えている。まぎれもない木下監督の代表作で、日本映画の名作の一本と言える映画だろう。
イニシャルKさん [DVD(邦画)] 8点(2016-09-04 00:45:27)(良:1票)
イニシャルK さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2025-01-26ドラゴンボール超 スーパーヒーロー6レビュー6.40点
2025-01-22電磁戦隊メガレンジャーVSカーレンジャー<OV>6レビュー6.00点
2025-01-13五番町夕霧楼(1980)5レビュー5.33点
2025-01-05五番町夕霧楼(1963)8レビュー7.00点
2024-12-24仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ6レビュー6.50点
2024-12-08劇場版 SPY×FAMILY CODE: White6レビュー5.64点
2024-11-07仮面ライダー×仮面ライダー オーズ&ダブル feat.スカル MOVIE大戦CORE5レビュー5.00点
2024-11-03バトル・ロワイアル 特別編8レビュー6.18点
2024-09-15仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦20105レビュー4.25点
2024-07-28こんにちは、母さん7レビュー6.77点
陸軍のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS