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《ネタバレ》 市川崑監督が三島由紀夫の「金閣寺」を映画化した作品で、主演は市川監督たっての希望でこれが現代劇初出演となる市川雷蔵がつとめている。25年前にはじめて見た時は雷蔵の出演している映画を見るのも初めてだったのだが、本当に時代劇スターなのかと思うほどに主人公である溝口になりきっていてビックリしたのだが、ほかの映画での雷蔵を見慣れた今になって久しぶりに見てもやっぱりうまく、自身の吃音に劣等感を持ちながら、金閣寺(本作では名前は変えられているが。)の美しさを絶対のものと信じる溝口の複雑な内面をスターのオーラを捨てて見事に演じていて、素晴らしく、演技派としての魅力がじゅうぶんに感じられ、間違いなく代表作の一本だ。黛敏郎の音楽が異様にマッチしていて、そのせいか全体的な雰囲気も独特なのだが、それも強烈な印象を残している。溝口の大学の友人である戸苅(仲代達矢)が足に障害を持ちながら、溝口とは逆に俗物的な描かれ方をしているのが印象深く、演じている仲代達矢の憎たらしさやその存在感も圧倒的だった。溝口が立派な人だと慕っていた和尚(中村鴈治郎)が後になって女遊びをするなど変わってしまうのだが、ちゃんとその和尚が自身の行為について苦悩するのを見せていたところも良かった。クライマックスの溝口の放火によって炎上する寺が非常に美しく撮られていて、圧巻で、まさに名シーンと言え、撮影の宮川一夫の手腕もそうだが、会社側からカラーで寺の美しさを描いてほしいという要求を突っぱねてあえて白黒を使ったという市川監督の意図もここにあるのではないかと感じる。(2024年12月30日更新)
【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 9点(2005-03-02 01:02:58)
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