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《ネタバレ》 この映画が見せてくれるのは、世界はいつだって内側にあるものだということ。人々が共有している外側の世界には、いまや壊れた世界とそれを取り繕っている人々しかない。家庭崩壊や性倒錯やドラッグなどは、いまさら深刻に語ってみても驚きなんかない、もはや当たり前のことだ、と軽く笑いとばしてしまう。
娘の友達に恋をして、彼女の気を引くためにエクササイズを始めてしまうケビン・スペイシー。アホなオヤジと笑うのもいいけど、物事は全てこの通り。なにかの目的をモチベーションにして、夢中に励む。世界は結局そうやって回っているんだから。主人公の中の世界では、そのこと自体がすでに幸せなんだ。外の世界にある彼女という存在自体とは関係なく幸せになれる。だからいざ彼女と一線を越えようとしたとき「初めてなの」という告白で、内世界と外世界のギャップを再確認し、すっかり醒めてしまう。 その後の彼女との会話は素敵なシーン。彼女との関係はすっかり娘の友達に接する父親のそれになっている。さっきまでニャンニャンしようと目を血走らせていたケビンが、ここでは思い出したように娘の心配をしちゃったりする。それは外世界で父親でいるための処世術であり、その実、父親としての本音でもある。内外の世界が一瞬だけ重なるその瞬間が美しいです。ここで死んでしまうところがまた、彼にとってこれ以上ない幸せなのかもしれません。彼の内世界では、温かい家庭が彼を包み込んでいただろうから。 主人公と対比した影として描かれる隣人、元海兵大佐役のクリス・クーパーの人生もまた観客にとって身に覚えがあると思う。棺桶まで持っていく秘密を抱えて、保身のために嘘を塗り重ねて生きている。主人公のことも、大佐のことも、あまりに私(達)に似すぎていてコメディだけど、同時にとてもシニカルだ。 しかし、登場キャラクターに付随するファクターを、自分の手札に変換して考えられない人にとっては、まったく共感を得ることが出来ない映画なのかも。 【337】さん 10点(2003-11-28 19:52:35)(良:6票)
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