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「愛してるから~」という台詞は用途が広いが、遣い方は難しい。誰もが「自分は愛されているのか」と不安になることがあると思うのだが、そんな時でさえ、「愛してるよ」と言われても、満たされないこともある。かえって、疑念や孤独感が大きくなることさえある。それを体験した人の中には、惰性のままに生きていけたらいいと思う人もいるのではないだろうか。この作品の登場人物たちは、まさしく、惰性で生きている。愛を受けたり与えたりした瞬間もあったのだろうが、それを思い出せば辛くなるだけだ。それを思い出せば、惰性で生きてはこれなかったのだ。それぞれに息子を失った二人は、喪失感によって息子への愛情を再認識したかというと、そうではないと思う。愛せなかった自分を認識しただけだ。そんな二人が結びつく。二人の間で、「愛してる」という言葉が交わされるようになった時、二人の結びつきは壊れているだろう。それでも、二人は生きていけると思う。チョコレートをほおばるような瞬間さえあれば、二人は生きていけるのだ。自分が今手にしている愛は、偽者かもしれないと怯えている人は、その不確かさを確認する必要もないし、わざわざ捨てることも無い。愛されていない人は、生きる意味を考える必要も無い。「愛」を重要視しなくていいのだ。この作品は、尊いとされている「愛」を、チョコレートという代用品で補ってしまうことをヨシとしている。人間に対して、とっても優しい作品だと思う。
【日雀】さん 10点(2004-06-20 09:55:00)
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