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《ネタバレ》 「あんたはあかんな。」この一言に尽きる。昔の少年のミイラだ、などと形容されていた木訥な主人公は、わかったような口ぶりで過去から逃げて「折角死んでいるのに…」などとのたまう。綾と赤目へ落ちて行くにしても、厚い情に押されてというよりも成り行き上そうなったという感じで、本気で死ぬ覚悟もなく、何一つ成し遂げられない弱さが顔に滲んでいる。生卵を丸飲みして微笑み、背に彫った「迦陵頻伽(カリョウビンガ)」のようにどこかに羽ばたきたがる綾に、心を見透かされても仕方ない。綾と別れた後、彼は闇の中にでも堕ちていくのだろうか。この物語は、自身の業を引きずって歩く男の姿を、暗い視線で描いた秀作だと思った。映画は2時間半以上の大作だが、最後まで興味深く観られた。主人公の気持ちを映すような暗い黒っぽい画も美しく、瀧のシーンは、濃い緑のなか浮かび上がるような白い服の二人が印象的だった。恋や情で繋がるのでなく、「死ぬに死ねない」という部分で繋がった悲しさがいっそう二人の道行きをを美しく彩っている。良い邦画に出会えたのが嬉しい。
【のはら】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-03-21 03:23:37)(良:2票)
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