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狂人が主人公という出だしが、乱歩(というか大元はポオだけど)らしくて素晴らしい。途中木下サーカスのフッテージが差し挟まれているのも‘乱歩的見世物感’を高めるのにいい効果を上げている。良い調子。前半もたもたしたテンポで人間入れ替わり譚が続くが、やばい島に行くまでのタメと思うとさして苦にならない。ところが肝心のパノラマ島がしょぼい。いや、劇中ではパノラマ島という呼称は一度も使われないので、私が勝手にそう思ってしまっただけなのだが。まあ、ラストの人間花火はあきらかにパノラマ島のものだし、メインプロットがそれを下敷きにしているのは間違いないだろう。とするとこの作品の島の描写には大事なものが欠けていると言わざるを得ない。それはマット画だ。狂人が作ったパラダイスのいかがわしさを表現するのにマット画くらい強力な武器は無いと思うのだが、石井監督にはそのような判断は無かったようだ。素晴らしい題材だけに適切なスタッフを連れてきたら張り切っていい仕事をしてくれたのではないかと思うと残念無念。この作品の場合下手でもいいのに。その代わりというわけではないが土方氏の怪演はとても味わい深い。しかしそれも初登場シーンのインパクトを越えられず、説明調の台詞をだらだら語らせたりして彼の魅力をうまく引き出せないまま唐突にドラマは終わってしまう。もっと彼の踊りが見たかった。人間花火は大林宣彦氏の「ハウス」のようなばかばかしさで面白いが、それまでの盛り上がりのなさを一発で逆転するほどのパワーはない。カルト映画として高い名声を誇る本作。どうやらこちらの期待が大きすぎたようだ。 暗黒舞踏の踊り手の中に一人豊満な女がいて、水中シーンで良い角度からその大きな尻を眺められたのがラッキー。
【皮マン】さん [映画館(邦画)] 4点(2011-10-15 16:33:14)
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