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《ネタバレ》 「弱肉強食」「食物連鎖」を中心に圧倒的な映像によって綴られている。後半部分のような海洋での神秘的な映像を前面に押し出すとよりも、前半部分の「食うか、食われるか」という“過酷な世界”を中心に描いているのが特徴だ。たとえ、小魚であっても生き残るために、仲間とともに必死に防御している姿が印象的だ。「生きる」ことに対して必死の生物たちの活動をみれば、我々人類が欠けている何かを感じることができるのではないか。
ただ、「シャチ」だけはどこか異質のような気がした。海上における食物連鎖の長ともいえる存在のためだろうか。食うか、食われるかという世界において、“狩り”を純粋に楽しんでいるように思われる。子クジラを数時間も掛かって襲っておきながら、舌と下顎しか食べないというのはこの世界のルールにどこか反しているのではないか。そのため、シャチにはどこか“人間”的な部分を感じられる。シャチを上手く利用して、生態系を無視している“人類”への警告のようなものをチラつかせれば、ただのドキュメンタリーとは異なる奥深い映画に仕上がったのではないか。 そう考えれば、本作は単なる記録映画に留まっているように思われる。 単なる記録映画を作りたいのならばよいが、奥の深い映画を目指すのならば、ドキュメント映画であってもストーリーをきちんと構成するなり、強いメッセージなりを映像に込めるべきである。 「人は今日も海を傷つけている」と単に最後でナレーションするのはあまり好ましくない手法だ。映像でその想いを伝えないと映画としてのレベルの高さを感じさせない。 最高の映像を撮ることに関しての技術や情熱は素晴らしいと驚嘆させられが、クリエイターとしては評価しにくい。メッセージなどなく、貴重な映像だけを繋げたフィルムを作ろうとするのならば、最後の締めのセリフはややズレているのではないか。本編と関係ないセリフで締められてはせっかくの映像も台無しになってしまう。 そのような趣旨を込めたいのならば、人間の海に与えている影響や悪行をラストに少しは映してもよかったのではないか。彼らも取材中に目の当たりにしているだろう。 油まみれになった海鳥、海に大量放棄された排水・ゴミなど、ラストに1分ほどでもまとめれば、少々受け取り方が異なったものになるのではないか。 美しい海と、汚れた海を対比的に描けば、人類へのメッセージに繋がったと思われる。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(字幕)] 7点(2004-11-14 00:52:24)
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