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《ネタバレ》 ピアースボンドの印象はというと、正直いって何も無い。他のボンドにあったような長所もなければ短所もない、極めて優等生であるが面白みに欠けるボンドである。強いていえばスマートさや洗練さが彼の売りだろうか。
敵役はどんどん魅力的になり、ボンドガールも単なる添え物ではなく、今後はボンドと対等な存在まで主張するようになってきている状況下で、肝心の主役の影が薄くなっているのは少し問題ではないか。 しかし、本作の視点はなかなか面白いと思う。6年という空白の歳月を利用して、その時代の流れを取り入れようとしている。冷戦は既に終結し、世界はどんどん大きく変わりつつある。ハイテク化が進む時代において、スパイという存在は過去の遺物ではないか、この時代にスパイは果たして必要なのかを問おうとしている。 マニーペニーとの会話にはセクハラという時代の視点が感じられ、Mについても、ボンドのような勘に頼るスパイに任せるのではなく、数字(恐らく確率や可能性など)を重んじる人物で、かつ女性の台頭という視点を取り入れているのは面白い。 そういう点を踏まえると、アレックの位置付けはあまり好ましくない。 彼の組織名となっている「ヤヌス」とは二つの顔を持つ神である。つまり、ボンドとアレックはもっと表裏の関係として描いた方がよかったはずである。二人のスパイを通して、スパイ不要の時代に何のために自分を犠牲にして、何のために人を殺すのかというスパイの在り方や信念を問うた方がよかったはずだ。 しかし、コサック(イギリスの裏切りによってロシアで生き恥をさらした人々)の生き残りとか、結局は金のため(自分の理解不足かもしれないが、彼らの方法では証拠を残さず金を奪うことは困難ではないか)という「逃げ方」をしてしまうのは残念でならない。 ナターリアの位置づけも中途半端だ。彼女は本作のキーパーソンであることは間違いない。しかし、その重要性や動機があまり告げられぬまま、敵の捕虜になったり、ボンドに随行するので混乱する。今までのガールは、私怨であったり、裏切られたための報復であったり、任務としてボンドと行動を共にするわけである。しかし、どうも彼女の場合はそれが当てはまらないような気がする。 また、確かにボールペンのトリックは面白いが、時間の制約下において片手でキーボードを打つ奴がいるとは思えないという疑問が沸いてしまうので無理を感じる。 【六本木ソルジャー】さん [DVD(字幕)] 5点(2006-11-30 00:17:21)
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