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《ネタバレ》 原作はかつて“沼”辺りまで見ていたような思い出がある。本作に描かれているゲームはかなり簡略化されているだけではなくて、ポイントが少々ズレているので、それぞれのゲームの面白みは薄れている。カラクリを知っているためか、それとも演出がマズいためなのか、ゲームに息を呑むような緊迫感があるわけではないので、評価を下げたいところだが、本作のメッセージがそれほど悪くはなかったので少々評価を上げたい。
脚本家の大森美香は、金を持っているから「勝ち組」とか、金を持っていないから「負け組」といったことで“人”を判断してよいのかということをメッセージとして伝えようとしていたのではないかと感じた。“金のため”に平気で仲間や他人を裏切って、それによって「勝ち組」ということになるのならば、「勝ち組」になんてならなくてよい。カイジが船井や利根川に勝てたのはイカサマというよりも、相手のイカサマや能力を逆用しただけだ。 カイジは友達の連帯保証人になっただけにも関わらず、限定ジャンケンの負けを被り(一人で十分なのに一緒に落ちるというのはいかがなものか。おっさんの負けを被ったあとにおっさんも地下に落ちてきたという流れの方がよい)、勝利した金を遠藤にかすめ取られ、それでもなお、おっさんと交わした“約束”を守ろうとしている。 カイジは誰も裏切ることはせずに、佐原や石田のおっさん、そして遠藤までをも最後まで信頼しているのである。現代にはあまり存在しないバカ正直なオトコだが、カイジは「勝ち組」でも「負け組」でもない何か新しい“階層”にいるような気がした。 一寸先は闇である不況時代においては、そういう人間こそ、真の「勝ち組」といえるのではないかというメッセージを受け取った。1年前は金を死ぬほどもっていても、1年後には破産するような時代である。「勝ち」でも「負け」でもない、人間としての当然の在り方を求められる時代ではないか。 あのシチュエーションで、遠藤が組織に歯向かってでも5千万円をカイジに貸すということは、原作的にはあり得ない流れだが、そういうカイジのバカ正直さ(自分のことを最後まで良い人と言う)、他人に対する信頼を、彼女なりに信じてみたくなったのではないか。 彼女もいわゆる「勝ち組」から脱して、違う“階層”に進みたかったのかもしれない。 最後は騙し討ちをしているが、“金利”という名目なので仕方はないだろう。 【六本木ソルジャー】さん [映画館(邦画)] 6点(2009-10-19 00:06:08)
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