カイロの紫のバラ の 六本木ソルジャー さんのクチコミ・感想

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カイロの紫のバラ の 六本木ソルジャー さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 カイロの紫のバラ
製作国
上映時間82分
劇場公開日 1986-04-26
ジャンルドラマ,ラブストーリー,ファンタジー
レビュー情報
高層ビルの最上階から地面に突き落とされたかのように衝撃を受けた作品。ラストではまさに「夢」から「現実」へと強引に引き戻されたような感を受ける。「現実」は汚い世界というセリフがあったかと思うが、まさに「現実」の厳しさを感じさせる。シンデレラはおとぎ話の中の世界であって厳しい現実からミアファローを救ってくれる王子様は存在しないということか。しかし、正確に言えばこれは間違いで、彼女にも王子様は確かに存在した。映画の中のトムである。
ミアには「虚構の中の夢(トム)」と「現実の中の夢(ギル)」と「現実の中の現実(夫)」という三つの道があったように思える。彼女が選んだ道は「現実の中の夢」だ。しかし自分にはなぜ「虚構の中の夢」をミアが選ばなかったのかも興味がある。ミアにとって、トムはあまりにも純粋すぎたのではないかという気がする。結婚してある程度、色々なことを知ってしまったミアにとって、彼の純粋さを受け入れることができなかった、または受け入れることに対する怖さがあったのではないだろうか。トムの純粋さを受け入れることができたのが、売春宿というのが何よりも皮肉的だ。
また、印象的だったのがラストのギルとミアの顔だ。ギルは飛行機の中で何を想うのか。ミアが薦めた役を演じることを決めたことからも、ミアに対する想いの全てが嘘なのではない。まだ端役であり、スターではないギルが選んだ選択もまた一つの「現実」だと思う。ミアを利用してトムをスクリーンに戻せなければ、ギルの俳優生命は終わるかもしれない…。彼にも厳しい「現実」を抱えていることは忘れてはいけない。
そして一人映画館に戻ってくるミア。なんとも哀しくも切ない表情である。しかし、あの映画を見つめる眼の輝き、何かを悟ったような笑顔は忘れられそうもない。「結局、私にはこれしかない」とでも言いたげであった。彼女には結局、夫の元へと戻るという「現実」しかないのだろうか。この映画を見ると、我々も何を求めて、映画館に足を運ぶのかを考えざるを得ない。
ミアと我々との違いもそれほどないのでないかとも思えてくる。ミアと自分自身を重ねて、色々なことを考させられる映画だ。アレン自身、自信のある作品と語っているだけに、この映画は本当に素晴らしい作品と思う。ファンタジックな内容でありながら「現実」を見つめている作品であり、また音楽も作品の内容とマッチしており素晴らしい。
六本木ソルジャーさん [DVD(字幕)] 9点(2005-05-10 00:11:20)
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