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《ネタバレ》 やはりテリーギリアム監督は苦手な監督だと再認識させられる一本。
独特の世界観を体現できる監督という点では評価できるかもしれないが、シリアスでもなければ、コメディというわけでもない世界。この捉えどころのなさ、生ぬるさが肌に合わない。 しかし、将来の官僚主義を、実にシニカルでアイロニカルな眼で鋭くみつめている点はさすがだとは思う。ギリアム監督は、公務員でもやっていたのかと思うほど実に的確に描かれている。徹底的な書類第一主義、「役所はミスしない」という傲慢さ、ミスをしたとしても責任の所在の不明瞭さ、これらによって引き起こされる「責任感」「人間性」「感情」の喪失が感じられる。優しい家庭人のジョンが、誤認逮捕したバトルを拷問死させてしまっても、少しも悪びれもなく「書類に書いてあったから」と言い放っているところが、実に上手いと思うところだ。 また、テロリスト撲滅という名目のために、国民を情報管理、情報操作している姿は、9.11以後のアメリカの姿そのものではないだろうか。本作においては、爆発はするもののテロリストの姿が全くみえないことも、映画内の爆発は政府による自作自演であることをギリアムは暗に示しているようにもみえる。タトルはただのモグリの配管工だし、ジルは政府のミスを告発しようとしているに過ぎない。彼らはテロリストではなく、政府にとってたんに都合の悪い者である。「罪」をでっち上げて彼らを逮捕しようとする姿は、戦前の思想統制までも思い起こさせる。 また、巨大な官僚主義に対して、「夢」を信じて一人むやみに立ち向かってしまうサムラウリーの姿には、ギリアム監督の「夢」である「ドンキホーテ」的な要素も感じられる。 そして、その戦いが決して報われることがないのも実にギリアムらしくアイロニカルなところだ。巨大な官僚主義には結局は勝つことができない。勝てるとすれば、それは「夢」の世界でしかないという皮肉が実に上手い。 誉める点は実に多いのだけれども、どうしても好きになれないのが本作の欠点だ。安っぽさ、不真面目感がそう感じさせるのだろうか。また、どのキャラクターも感情移入しにくい点にも多少問題があるのかもしれない。 【六本木ソルジャー】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-12-31 00:09:06)
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