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《ネタバレ》 京都を舞台にした青春映画には独特の雰囲気があるが、その雰囲気が世界観に昇華されているのが本当にスバラシイ。よく知っている風景が続出するだけに、そこで展開される奇想天外な物語とのギャップに完全にやられた。原作未読だが湯浅監督の『四畳半神話体系』は完走済。同じ世界観ではあるけれど、ハチャメチャだった『四畳半』と比べると、非リア充な「先輩」の恋というモチーフが一貫しているぶん、この映画のほうが感情移入もしやすい。とくに、先輩と黒髪の乙女の、さわやかでシンプルなラストは心から「美しい」と思って涙してしまった。こんなところからもわかるように、私もけっこう「先輩」に近い青春を送ってきたわけだが、一緒に飲み会にいるのに結局話しかけられない感じだとか、人知れず彼女との共通項を求めて奮闘してしまう感じとか、イベントにかこつけて近づいてみようとする感じとか、いざ接近してみたらいろいろ恐ろしくなって結局挙動不審になるところとか、いちいちグサグサと来る。結局、本作で一番のスペクタクル場面が、もう一度心を閉ざすか、一歩踏み出すかの先輩の心の葛藤である点も象徴的だ。ある意味、『桐島部活やめるってよ』とは全く正反対のアプローチで、見事に自分を(あんまり戻りたくもないと思っていた)青春時代へと連れ戻し、そして、その「愛おしさ」を再発見させてくれるという意味で、自分にとって大事な作品になった。あと秀逸なのが、時間の設定。一夜で一年という矛盾も、一人一人が生きる時間の相対性を見事に表現している。そう、ある時代の一夜は、1年に相当するだけの濃度と長さをもって経験されるのだ。そして、人の緩いつながりを可視化して「社会」を描いた映画に僕は弱いのだが、そんな僕にストライクな展開も待っていた。細かいことを言えば、序盤のはしご酒や演劇シーンの描写は(わざとだったとしても)面白みに欠ける平板さで、ちょっと退屈だなと感じたし、登場人物ももう少し絞ったほうが90分の物語の「濃度」がもっと凝縮されたようにも思う。でも、かつての(今もか)「四畳半主義者」に捧げるストレートな青春賛歌として、幸福な90分間をありがとー!と叫びたくなる作品である。
【ころりさん】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2018-06-08 21:50:17)
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