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低予算ではあるものの映画にはスケール感があり、なかなか見応えのある仕上がりとなっています。舞台は田舎町で大規模な見せ場はないものの、国家の一大事というハッタリは利いているのです。この時期においてウィルス感染ものといえば「アンドロメダ…」くらいしか存在しておらず、その「アンドロメダ…」にしても地下の研究室でウィルス対策にあたる科学者のドラマがメインであったため本格的に感染パニックをテーマにした作品は本作が初であると思うのですが、そんな中で本作は感染パニックものとしてほとんど完成形とも言える姿をしています。以降に製作される「カサンドラ・クロス」や「アウトブレイク」といった大作が完全に本作の影響下にある点から、この映画がいかに先進的な作品であったかが伺えます。また感染もののプロトタイプであるに留まらず、ロメロらしい体制批判の映画である点からも本作は評価できます。問題の根本的な解決よりも秘密保持や治安維持といった体裁を優先したために対応が後手に回り、さらには現場でウィルス撲滅の対応にあたる科学者の邪魔までしてしまうという政府や軍部の無能ぶりが描かれるのですが、本作製作から40年近くを経た現在の日本において、原発事故の最中で日本政府は同様のミスを犯しました。この先見性はやはり凄いと思います。ホラーとしても見どころが多く、幼いわが子を殺す父親が登場する冒頭にはじまり、編み棒で兵士を刺し殺すおばあちゃん、銃撃戦のど真ん中で掃除をするお姉さんなど、狂気の見せ場が目白押し。本作におけるロメロの仕事ぶりは神がかっています。唯一残念だったのは主人公にまったく魅力がなかったことで、ボサボサ頭のブ男には感情移入できませんでした。
【ザ・チャンバラ】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2011-10-20 22:20:24)
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