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《ネタバレ》 ベースとなる設定はハリウッドで多く製作されているソリッド・シチュエーション・スリラーと同様のものなのですが、これを被害者の側ではなく、仕掛人の側から描いている点が本作の特色。視点を移動させただけで映画の印象には大きな変化がもたらされており、なかなか面白い切り口の映画だと思いました。科学者達が被験者を淡々と追い込んでいく様には、なかなか空恐ろしいものがあったのです。ただし、この切り口には大きな副作用もありました。厳しい状況からどうやって突破口を見つけ出すのかというサスペンスや、黒幕は一体誰なのかというミステリーが失われてしまうために、類似作とはまったく違う見せ場を準備しなければならなかったのです。。。
本作の監督を務めたジョナサン・リーベスマンは、『テキサス・チェーンソー/ビギニング』を、リメイク版第一作はおろか、トビー・フーパーのオリジナルをも凌駕する鬼畜ホラーの傑作に仕立て上げた人物。思えば『ビギニング』もまた、被害者が誰ひとり助からないことが明らかになっているという設定上の大きな制約条件を抱えていた作品であり、その点を考えると、彼は本作の監督についても最適任者であったと言えます。果たして彼は本作をどう料理するのかに注目していたのですが、残念ながら本作では『ビギニング』ほどの仕事を見ることはできませんでした。監督がスポットライトを当てたのはクロエ・セヴィニー演じる新人科学者であり、非人道的な実験を傍観する彼女の心境がどう変化するのかを映画のハイライトとしたのですが、この点がどうにも弱かったために、作品全体が締まらない結果に終わっています。彼女が抱えるジレンマを、もう少しわかりやすい形で観客に提示すべきだったと思います。。。 さらに本作を残念な結果に終わらせているのは、公開時期を完全に逃してしまったという点です。情報機関による米国民の盗聴や、グアンタナモやアブグレイブでの異教徒に対する拷問など、対テロ戦争に勝利するためには手段を選ばなかったブッシュ政権に対する批判が本作の根幹にはあると思うのですが、本作が公開された2009年にはすでに民主党のオバマ政権に代替わりしており、今さら感が出まくっています。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 5点(2013-04-24 00:51:26)
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