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レビュー情報
本作の根幹にあるのは大した驚きも面白みもない陳腐な陰謀論なのですが、ポランスキーはこんなにもどうしようもないB級ネタを実に上品に仕上げています。その仕事ぶりは「さすが巨匠!」と言えるものであり、ベルリン映画祭監督賞受賞という高評価にも納得がいきました。しかし、それと同時に本作ではポランスキーの限界もはっきりと露呈しています。この人は70年代の監督さんなので映画全体があまりにチンタラしているし、観客のテンションを維持するためのイベント作りもできていません。クラシックなサスペンス映画の味わいを懐かしむ観客にはこのくらいで丁度良いのかもしれませんが、現代の観客が要求する適度な娯楽性を獲得するには至っていません。。。
さらに残念だったのは、ユアン・マグレガーという華も実力もある俳優を獲得しながら、彼をただの狂言回しに留めてしまったこと。『フィクサー』でトニー・ギルロイがやったように、謎解きとシンクロする形で主人公のドラマを語れば面白くなったものを、そういう工夫を一切していないのです。その結果、主人公をゴーストライターという特殊な立ち位置の人間にした意味がすっかり失われており、仮にその職業を新任の補佐官や家政婦に変更しても映画が成り立ってしまうという残念な状況となっています。。。 肝心のミステリー部分についても、ポランスキーの老練な演出によってうまく誤魔化されているだけで、よくよく考えてみれば相当に杜撰な内容です。【一般人】さんがご指摘の通り、設定のあらゆる点において納得感が薄いのです。前任のゴーストライターを消したにも関わらず、彼の足跡はそのまま放置というCIAのバカさ加減などは目に余るものがありました。主人公による謎解きにしても、本丸となる点についてはラスト5分で「いきなり気付く」というロクでもない処理がなされており、だったらこれまでの2時間でやってきたことは何だったんだと愕然とさせられました。だいたい、あんなにも露骨なダイイングメッセージに今の今まで誰も気付かなかったという設定は、さすがに不自然でしょ。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 5点(2012-11-19 18:26:06)(良:2票)
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