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レビュー情報
《ネタバレ》 作品中にはよくできた部分とダメダメな部分が混在しており、たった90分程度の映画なのにえらくムラがあることが気になったのですが、鑑賞後にプロダクションの背景を調べてみて納得しました。製作会社であるモーガンクリークと監督のジム・シェリダンが完成した作品を巡って対立し、モーガンクリークは監督から作品を取り上げて再編集版を勝手に作成。シェリダンは監督協会に訴えてクレジットから自分の名前を外すことを要求し、ダニエル・クレイグとレイチェル・ワイズは監督を支持して作品のプロモーションへの参加をボイコットするという泥沼の事態に陥ったのだとか。クレイグは『インベージョン』でも同様のトラブルを経験しており、お疲れ様としか言いようのないキャリアを歩んでいます。
【注意!ここから激しくネタバレします】 内容はよくある本人オチ系の物語ではあるのですが、中盤でさっさとネタバラシをしてしまうため、「あといくつかネタフリがあってからオチだろう」と油断して見ていた観客はかなり度胆を抜かれます。また、主人公家族の描写が極めて丁寧で感動的であることも作品の目玉となっています。『マイ・レフトフット』や『父の祈りを』を手掛けてきたシェリダンだけあって、家族の描写では外していないのです。 家族は主人公の妄想による産物と見せかけているのですが、終盤で一度、主人公を助けるために物理現象を起こす場面があります。この描写により家族は幽霊であることが判明するのですが、そこから浮かび上がってくる、哀れなお父さんのために奥さんと娘たちが「都会から郊外に引っ越してきたエイテンテン一家」という家族ごっこに付き合ってあげていたという図式には泣かされました。また、一家惨殺の真相が暴かれたことで奥さんは自らの役割が終わったことを認識し、「私たちのことはもういいから、あなたは新しい人生を始めなさい」と言って主人公を送り出す場面ではもっと泣かされました。ここまで泣かされる幽霊映画は滅多にありません。意外なほど幅の広い演技を見せるダニエル・クレイグの腕前や、どこか超越性を感じさせるレイチェル・ワイズの存在感の貢献もあって、エイテンテン一家の物語がとにかく良いのです。 他方、お向かいさんに係るエピソードはボロボロで、このために最後の大オチがまったく決まらないという事態を起こしています。事件の真相を要約すると、親権裁判に勝てそうになかったジャック・パターソンは妻・アンの殺害を計画するが、殺人を請け負ったチンピラが間違えてお向かいのウォード家に侵入して一家を惨殺したというもの。一家惨殺についてこれだけ引っ張っておいて「家を間違えた」が真相ではズッこけてしまうので、もう少しうまいオチを考えて欲しいものでした。また序盤から中盤にかけての、主人公ウィルとパターソン一家との関係性の描写が希薄であったことから、この一家が物語の真相に深く関与するという点にも唐突感がありました。 【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(吹替)] 7点(2016-02-12 14:29:00)(良:1票)
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