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レビュー情報
ポール・グリーングラスの代表作と言えばジェイソン・ボーンシリーズですが、実はこの人はジャーナリスト出身であり、その経歴を活かして『ブラディ・サンデー』や『ユナイテッド93』といった実録物でも才能を示しています。本作もその系譜に連なる作品なのですが、同時に『ボーン・アルティメイタム』や『グリーン・ゾーン』で得た娯楽アクションの手法も存分に活かされており、圧倒的な迫力と臨場感で観客をその現場に立ち会わせるという空前絶後のスリラーとして仕上がっています。序盤で登場人物の簡単な紹介が終わると映画は一気に本編に入り、クライマックスまで一瞬の緩みもなくフルスロットルで突っ走るという絶倫ぶり。海賊の乗る救命艇と彼らが目指すソマリア海岸、そしてそれを追う米駆逐艦の位置関係、救出作戦の進行具合など、現場の概要や事件の推移といった情報を簡潔に整理して観客へ伝える技術は超一流であり、観客の側が意識せずとも物語が自然と頭に飛び込んでくるという親切な作りになっている点でも感心しました。また、海賊の側にも同情すべき背景があること、彼らが主人公に対して乱暴するのも、受容可能な量を遥かに超えるストレスを受けたためであること等、海賊達が絶対悪として描かれていないことも好印象でした。撮影にあたって米海軍の全面協力を得られているという事実が示す通り、本作がアメリカ万歳映画であることは間違いないのですが、それでも、安易な勧善懲悪という図式は避けて、多面的な見方ができる社会派映画として作り上げた点は大いに評価できます。とにかくこの映画、貶す点が何ひとつ見つからない程よくできています。。。
ここしばらくは大物臭が漂い、『キャスト・アウェイ』以降は骨身を削るような演技からも遠ざかっていたトム・ハンクスですが、そんな彼が本作ではかなり体を張っています。彼ほどのクラスの俳優がここまでやるのかと驚いた程であり、久々のオスカーノミネートもありうるのではないかと思いました。凄いと言えば、主人公と対峙する海賊達も同様であり、アメリカ在住のソマリア人から選ばれた演技経験ゼロのど素人でありながら、ハンクスと堂々と渡り合ってみせています。 【ザ・チャンバラ】さん [映画館(字幕)] 8点(2013-12-01 00:39:44)
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