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《ネタバレ》 リアルタイムでの衝撃に加えて後世に与えた影響も大きく、もはや語り尽くされた感もある本作を今更レビューすることはなかなか難しいのですが、私が感じた素直なところを書きます。
まず本作が型破りなのが、登場人物達が本筋とほぼ無関係な会話を延々と繰り広げており、話の流れが遅いどころか、流れが完全に止まっている時間すらあるということ。タランティーノはキャラクターを作った後にその人物が喋りそうなことを延々と書き連ねていったのかもしれませんが、本筋に対してキャラクターが従属するという通常の関係性を逆転させ、まずキャラクターありきで彼らを自由に動かし、本筋を二の次にしたという辺りが斬新でした。 だからと言ってキャラクター劇に終始しているわけではなく、一見すると無関係なエピソードを並べることで「これらがどんな終わり方をするのか」という強い関心を観客に抱かせつつ、時間軸の解体という荒業によってこれらをもっとも効果的な形で見せており、本筋は本筋で十分に凝った作りになっている点も見事なものでした。特に驚いたのは、主人公であるビンセント・ベガが上映時間の半ばでアッサリと死亡するということ。彼はトイレから出てきた不意を突かれ、見せ場もセリフもないまま死亡しますが、通常の映画では主人公がこんなタイミングでこんな死に方をすることなんてまずありえないので、観客もまた不意を突かれるわけです。しかも彼の死がその後の展開に何らの影響を与えることもないのですが、こんな話の動かし方はかつてなかったと思います。 また、これだけ高度なことをやりながらも、まったく肩ひじの張ったところのない雰囲気が独特な魅力に繋がっています。例えば前述したベガの末路などは、直前に方向転換したジュールスとの対比で如何様にも深い意義を与えることができたのですが、タランティーノはあえてそれをやっていません。一応考える素材はあるので、その死から意義を感じ取りたい観客には深く考える余地は与えられているものの、映画に教訓なんて求めないと思っている観客にはそこを素通りする自由も与えられている。こんなスタイルの作品には滅多にお目にかかれません。 最後に、キャスティング面にも楽曲選びにもセンスが感じられることが、本作が愛される大きな要素となっています。大スター・ブルース・ウィリスやオスカー俳優・クリストファー・ウォーケン、当時伸び盛りだったティム・ロスら当然主役に選ばれるべき人達を差し置いて、10年ほど表舞台から姿を消していたジョン・トラボルタを選んだという意表を突いたキャスティングや、これまた数十年ほど忘れ去られていたミザルーの曲調を作品のメインテーマに据えた点など、陳腐化してダサくなって一旦廃れたものを一周回ってかっこよく見せるというリメイクの技術が極めて洗練されているのです。【ひのと】さんもレビューしておられますが、この映画を作った人のセンスを自分も理解できるんだと言いたくなるような雰囲気が本作には確かにあって、その後のタランティーノ作品と比較しても本作が唯一無二の存在だと言えるのは、この部分が突出しているためだと言えます。 公開当時から斬新で、しかもその方向性の作品でいまだにこれを超えるものはないと言えるほどの完成度の異常さや、直接的・間接的に影響された作品が膨大な数に及ぶということを考慮しても、映画史上の最重要作の一本であることは間違いのない作品だと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [インターネット(吹替)] 9点(2018-05-28 19:37:29)(良:1票)
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