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《ネタバレ》 「ファニーゲームは物凄い!狂っている!」という噂を聞き猛烈に関心があったものの、長期に及ぶ廃版状態により、DVDを入手して鑑賞するまで5年待ちました。人は見られないものほど見たくなる。期待パンパン、さぞかしショッキングな映画なんだろうと身構えて鑑賞したため、衝撃はそれほど感じませんでした。「得体の知れないヨーロッパ映画として鑑賞できれば」と、とても残念に思いました。要するに監督がやりたかったのは、暴力がギッシリ詰まった娯楽映画を見て「楽しい」と喜んでいる一般の観客達への嫌がらせでしょうか。デンジャラスのノッチに似ている不快極まる兄ちゃんは、普段暴力的な映画を見て喜んでいるあんた達の姿なんだよと。。。若者二人は、天の上から家族に不幸を与えます。逃げられるかも、警察に通報されるかもという、被害者と同一次元にいる加害者であれば持つであろう不安や迷いは一切ありません。自分たちがゲームを支配し、ゲームは必ず自分たちの思い通りに終わることを分かって行動している以上、彼らは映画固有の登場人物というよりも、映画を作っている人間や、それを眺める観客に近い存在だと考えられます(自分の作品に突如割って入る手塚治虫や鳥山明みたいなもの)。彼らはゲームが単調では面白くないから、被害者を泳がせ、哀れな家族にも一応「ゲームに勝つ」チャンスを与えます。しかし被害者が予想外の反撃をすれば、巻き戻して自分たちのシナリオに戻します。これは、結末のわかりきった話、設定が少し違うだけで中身はどれも大差のない娯楽作を飽きもせず何本も見て喜んでいる観客への皮肉でしょうか。まったく同じ映画であってはいけないがお約束は守って欲しい、自分たちが期待する内容でなければ不満に感じるという短絡的な観客たちへの。そんな頭空っぽの観客たちが、刺激を求めて「美化された暴力」を消費することの空恐ろしさ。これを、「美化」というオブラートを取り払った形で観客に提示します。「あんたらが喜んで見ている暴力って、そんなに楽しいものかね?」。本作から10年後、監督はまったく同じシナリオでファニーゲームをリメイクしました。わかりきった結末の映画を見て喜ぶ観客への嫌味はまだ終わっていないようです。
【ザ・チャンバラ】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-07-23 20:48:07)(良:2票)
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