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《ネタバレ》 この監督さんはやっぱりうまい、物凄く面白かったです。抑圧シーンのイヤ~な空気や、逆襲に転じる場面のカタルシスなど観客の心を揺さぶることにはことごとく成功していて、かなり見応えのある作品でした。ワキガをバカにされたことから地味で陰気な男ベルスの心にスイッチが入り、最初は穏やかだった他の看守役達もそれにつられて暴力的になっていくという過程には妙に説得力があって、人間心理の一端をうまく映像化できていると思いました。本作の前半部分はスタンフォード監獄実験において観察された結果をうまく拾ってきているようで、囚人役に消火剤を浴びせたり、素手でトイレ掃除をさせるといった行為は現実に発生したようです。さらには、辞退を申し出た被験者の離脱を許可しなかったり、禁止事項であるはずの暴力行為が発生するに至っても被験者の安全より研究対象への関心を優先して実験を中止しなかったなど、教授側のマッドな行為も事実に基づくようです。看守役の被験者もさることながら、実験場という閉鎖空間において神の如き権力を持つ教授もまた、その疑似的な権力によって公正な判断力を失ってしまったようです。後半に入ると映画独自の展開を辿りはじめるのですが、ここから本作の評価は難しくなります。状況がより逼迫することで映画としては俄然面白さを増すのですが、これが実際の実験によるものではなくフィクションの物語であることから、「人間はここまで怖くなるんですよ」という恐怖感に歯止めをかける結果となっています。
【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2011-05-17 21:24:00)
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