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ブラッカイマーはキャスティングに抜群のセンスを持つ人物ですが、本作でもそのセンスが如何なく発揮されています。ブルームとナイトレイの絵に描いたような美男美女ぶりはファンタジックな時代劇にピッタリだし、一方で物語を進めるのはデップとラッシュという演技の出来る俳優二人。この意外な組み合わせが素晴らしく効果をあげています。デップ本人すら気付いていなかったであろう一面を開花させ、オスカーノミネートまでさせた手腕はなかなかのものです。。。と、本作を評価できるのはここまで。肝心の中身はまったく楽しめませんでした。「海賊」や「呪い」を扱っている割に恐怖心や威圧感を抱かせず、薄っぺらなアクションと軽いセリフが143分という長丁場に渡って繰り広げられるのみ。「悪い海賊に追われる→捕まる→脱出」という展開を何度も繰り返すのですが、悪役である海賊が怖くないためチェイスに緊迫感が伴っていません。ファミリー映画であっても悪役は怖く演出すべきなのですが(ディズニーのアニメ作品でもやっていることです)、ファミリー映画に慣れていないブラッカイマーは徹底的に刺激を抑えた安心品質に仕上げるというミスを犯し、活劇としては致命的に締まりのない出来となっています。また、味方となる海賊の描き方も不十分。主人公達の船を動かすクルー程度の扱いとなっているのですが、海賊たる者、大海原を自由に駆け巡るロマンを体現した存在でなければなりません。驚いたのは中盤のチェイスで、ここは彼ら海賊の腕の見せ所だったはずなのですが、海についてはド素人のエリザベスやウィルからの指示によって動き、万策尽きると「良い作戦はないか?」とウィルに尋ねる始末。何を考えてこんな展開にしたのかと不思議でなりません。ラストの戦いにしても、洞窟の中ではジャックとウィルが戦い、外では良い海賊vs悪い海賊の大決戦が繰り広げられるべきなのですが、本作では「俺達じゃ勝てないから」と海賊達がそそくさと帰ってしまいます。海賊をテーマにしながら、海賊がまったく描けていないのです。また「呪い」の扱いもマズく、バルボッサ達が呪いに苦しむ描写がないため、戦いの目的がボケボケとなってしまっています。そもそも、悪い海賊が不死身の力を手にしようとする物語ならともかく、不死身の海賊がその力から解放されようとする物語では、ジャックやウィルは快く協力してやればいいじゃないかと思うのですが。
【ザ・チャンバラ】さん [ブルーレイ(字幕)] 3点(2004-09-07 18:50:36)(良:1票)
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