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レビュー情報
《ネタバレ》 1話1話が充実していて、1時間とは思えないボリュームを全話に渡って味わえます。また全10話を通した時のバランス感覚も見事で、訓練の第1話にはじまり、そこいらの戦争映画を軽く超える圧巻の戦闘シーンを見せる2~4話(戦場における戦車の圧倒的なパワーが描かれた『補充兵』は特に気に入ってます)、エピソードごとに主人公を変え、毎回違った切り口でドラマを見せる5~8話(無能な司令官に振り回される『雪原の死闘』にはサラリーマンとして共感を禁じえませんでした)、第二次大戦の悲劇をシリアスに描いた第9話、そして締めくくりの第10話。どのエピソードも素晴らしいのですが、最終回の第10話には特に意義を感じました。戦場における友情や英雄物語を描きたいのなら8話で終ればよかったし、第二次大戦の歴史を描くのであれば9話まででよかった。しかし戦争が終わって占領軍となったアメリカ兵達の姿を描いた10話を終わりに持ってきたことで、この作品は他にない奥行きを得たように思います。ナチスが残した高級品を「戦利品」と言って勝手に持ち帰り、敗戦国民に対して横暴に振る舞い、元ナチスと言われる老人(真偽は不明)を不確かな情報から射殺する、そんな姿を最終話できっちり見せてくるのです。そしてラスト、ウィンターズからE中隊に対して言われるべき言葉を、ナチスの将校に喋らせるという演出も見事。このシリーズに対しては「アメリカ万歳ではないか」という否定的な意見もあります。確かに第9話まではアメリカ兵の視点のみで描かれており、悪役であるドイツにとっては公平性に欠ける描写もあったように思いますが、この非常に冷静な締めくくりを持ってきたことで、普遍的な物語になったように思います。あえて難点を言えば、戦争ものの宿命として個人の判別が難しかったことでしょうか。10話見ても顔と名前が一致しない隊員が何名かおり、「で、いま死んだの誰だっけ?」ということが毎話あったのが残念。「これが登場人物ですよ。みなさんしっかり覚えてくださいね」という意味で第1話があったんだなと、10話全部見て気付きました。ま、この混乱を逆手にとれば1周目は圧巻の映像に驚き、2周目は緻密なドラマを発見する、そんな楽しみ方もできそうなわけで、これは何度も見返し、そのたびに新しい楽しみに気付く作品になりそうです。
【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 9点(2008-08-21 02:06:16)
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