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《ネタバレ》 スピルバーグ監督の作品は割と観ているが,特に好きな監督という訳でもない。『シンドラーのリスト』,『インディアナ・ジョーンズ』シリーズ,『ミュンヘン』,『ジョーズ』など見ごたえのある映画もある一方,『ターミナル』だとか『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』だとか,訳の分からない映画を撮ってしまうので困惑させられる。そしてこの『宇宙戦争』もその一つで,同じ監督なのか?と思わせられる。
確かに名作『ジュラシック・パーク』や『ジョーズ』のように,人間を追い詰める異生物を描く時のシーンを観ると,サスペンスを描く手腕は顕在なのだと感じる。芸がないといえばそれまでなのではあるが,強者の弱者への追跡という十八番は何度観ても優れていると思うのだ。また,『ジュラシック・パーク』や『ジョーズ』などには絶対にない設定が本作の魅力であるが,それは圧倒的に強い敵を描いている点だ。恐竜は,銃で倒せる。だが本作の敵は生身の宇宙人がなかなか出てこず,蛸のような乗り物に乗って,人間の生き血を吸うが,バリヤーを張っているので人間の攻撃はまったく通用しない。この圧倒的なパワーを持つ敵を描いたというのはスピルバーグ作品では珍しいことであろう。 しかし,演出に冴えがあるにもかかわらず,設定やそもそもスクリーンプレイがどうしようもない。トム・クルーズの息子はなんだ。簡単に人間を殺す敵に生身で立ち向かうため,父親と離れたにもかかわらずなんと生きているというのだ。家庭を顧みない父親という設定がトムだったから,そんな父親にアディオスというのが息子の行動ではなかったか。それを台無しにするかのような生還。 原作があるから仕方のないことかもしれぬが,最後の最後で教訓めいた台詞が出てくるのは解せない。地球と人間との共存だとか,地球にそもそもあるものが宇宙人を倒しただとか・・・実際後者の理由で映画は戦争終結に至るが,ばかもやすみやすみいいなさい。圧倒的に強かった敵が,地球に備わったものと相容れないから敗北するというあっけない結末には失望する。私はダコタが,宇宙人の攻撃を「テロなの?」といった冒頭の台詞に期待した。米国における理不尽な暴力が初めてやってきたのが9.11のテロ事件とすれば,この映画はそれを,遂に戦争にまで高めたのかと思ったからだ。現に「ヒロシマ」という台詞もあったと思うが,最後に全てを台無しにした。 【はなぶさ】さん [DVD(字幕)] 5点(2006-09-03 22:54:42)
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