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レビュー情報
《ネタバレ》 怪談ものの常套でもある悲劇の物語は概して単純なのですが何とも強い吸引力があります。冒頭の絶妙な構図の藪の中より物々しく現れる野武士の集団に不安な心持ちにさせられ、実際に暴行される母と嫁のシーンの毒々しさは現実さがあり残酷で、ある意味、本作で最も怖い部分と言えます。それに対して妖怪となった母と嫁が復讐を行うシーンは、まるで能を見るような品格を感じさせ美しさすらあるのですが、実行され殺害された侍たちの姿は夢から覚めたようにやはり無惨でギョッとさせられるのです。この幻想的な描写が人間業ではない物の怪の不気味さや怪しさを醸し出しているのですが、これが実に巧いのです。女たちの浮遊感、屋敷と藪の境界線の不透明さ、そして復讐のシーンに限らず銀時と嫁が絡み合うシーンの官能的な美しさなど特筆ものです。この胸の詰まるような物語後半、腕を取り戻しにくる箇所などは渡辺綱の逸話と同じ流れですが、愛欲あふれる母と子の関係だからこそ一際すざまじい情念が渦巻いておりドラマがより劇的なものとなっています。また人間の描き方も良くて侍の捉え方、特に酒呑童子を山賊だったと笑う頼光の豪快なキャラクターが面白いです。・・・ただ一点だけ気になるのは言葉遣いで、なんだか時々あからさまに現代語が入り混じっていたような気がします。
【ミスター・グレイ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2007-04-28 17:22:21)
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