26.《ネタバレ》 本作は名優チャールズ・ロートンの唯一撮った映画にして傑作フィルム・ノワール。これが本当の“一発”映画です。
ディヴィス・グラッブの傑作小説、ジェームズ・エイジーの脚本を手直ししたロートンの巧みな演出、完璧なシナリオ、ロバート・ミッチャムの怪演とリリアン・ギッシュの力演。
物語は大胆な空撮とリリアン・ギッシュの謎の聖書の文句から始まる。
これが既に伏線なんだから凄い。上空から人々を写していく様子は、まるで「神が空から見ている」とでも言いたげで神秘的。
そこにロバート・ミッチャム演じる殺し屋が独り言を言いながら登場する。
左手に「LOVE(愛)」、右手には「HATE(憎悪)」を刻んだこの黒衣の男。
犯罪を重ねる偽の牧師であり、女性の性交に対して異常とも言える憎悪を抱いている。
「女性の体は快楽のためにあるのではない。神から子を授かるために在るのだ。」
正論のように聞こえるが、「女性は子を産む機械だ」とかほざいた例のクソ政治家とどっこいどっこいの持論ですよ。まるでこの世は「聖母マリア以外の女性はみんな死ねばいい」とでも言いたげだ。オマケに狙いはみんな未亡人だぜ?変態はどっちだよと。
そんなロバート・ミッチャムは車を盗んで捕まったのがポルノ小屋だぜ?
ポケットから出したナイフは勃起した息子(せがれ)か?つーかそこで捕まるって…。
とまあ、このように色々ぶっ飛んでるサイコ野郎。こんな奴がただ黙って仁王立ちでもしてみろ?スゲー怖い。
そんな男にある家族が目を付けられ、偽牧師の魔の手がじわじわと締め上げる。
ロバート・ミッチャムに狙われる兄妹はある「秘密」を握っている。それは父の遺言とも言えるものだ。
冒頭で警察に取り押さえられる父親。これもまた伏線だった。
追い込まれる兄妹、反撃され奇声を挙げながらも襲いかかるミッチャム。
牧場から盗んだ馬で二人追跡するミッチャム。
白馬の王子様ならぬ白馬の死神。恐ろしいミスマッチだ。
そんでもって終盤出てくるリリアン・ギッシュのばあちゃん。
孤児を引き取り女で一つで子供たちを育てる逞しい女性だ。
キリストの教えも「心の支え」として教える程度。キリストを「殺人動機」として利用するミッチャムとは大違い。
オマケに猟銃で武装だぜ?逆にミッチャム待ち構えてハントしちゃうBBAなんだぜ?
BBA結婚してくれ。