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《ネタバレ》 いくつかのとりわけ素晴らしいシーンを別にすれば、映画としては格別驚くべき作品ではないとも思うが、政治的メッセージを込めた意味合いや、撮影当時の状況を考慮すると忘れられない作品だと思う。ロッセリーニ監督はこの後「戦火のかなた」と「ドイツ零年」を続けて発表しネオレアリズモの旗手となったが、本作は他の二作とは少しばかり趣が違う。例えば人物であるが、基本的にどこか傍観したような姿勢であるのに本作の神父さんは様々なシーンで性格が描写され感情的でもあり近距離だ。それに老人のベッドに武器を隠そうとするシーンなどはとても面白くなっている。だが逆に物語としては他二作よりは比較的ドラマティックではない。これは同じくネオリアリズモの担い手であるデ・シーカ監督(「自転車泥棒」や「靴みがき」)にも言えることだが、リアリズムと言いながらも物語展開は極めて劇的なのだ。もちろんこれらは皆あくまで映画であるし、過酷な社会状況を映し出したことやクローズアップを多用しない等の撮影方法、一瞬で失われる命、主人公たちに大団円が用意されていないという意味などでは現実的で娯楽映画とは一線を画すわけであるが。そんな中でも本作は、出来事自体も図ったのではない偶然の産物に思えドキュメンタリー形式に最も近くありのままの姿が映し出されているのだと感じられる。ただ、ラスト近くの拷問の場面、地獄のような責め苦を課す部屋の隣室に試練を受ける神父を挟み、その扉向こうは享楽に耽る娯楽室、さらに誘惑してくる容赦ない将校と同性愛の匂いがする不気味な女のキャラクターは狙ったように悪魔的だと思う。
それからこれは三部作通して言えることだが、決して同情を誘うような安易な存在ではない子どもの描写や使い方が突出している。途中のサッカーシーンやラストの射殺を見守る姿などすっかり心を動かされてしまう。 だが、私の最もお気に入りのシーンは神父さんが裸の女の彫刻と男の彫刻が向き合って置いてあるのを反らす何でもない場面で、喜劇的行動を出し抜けに挿んだロッセリーニのユーモアが何とも可笑しい。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-11-05 18:15:51)(良:1票)
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