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《ネタバレ》 なんといっても見どころは、淡々として色彩にとぼしいあっちの世界に突如として挿入されるグロシーンです。非日常は日常のあいだに提供されてこそ光るのであり、そのバランスが重要なのだとあらためて悟ります。こういう手法で、似たようなのは確か「スリープレス」というのを思い出す。
私たちは死んだらどうなるのでしょう。もしかすると、このボーダーサムマンの世界に行くのかもしれない。この世界観はとても説得力があります。また、ひょっとしてこの世界は自殺者だけが行くところなのかもしれない、という疑惑もあります。子供がいませんし。 誰もが自分の欲求だけを満たして満足して暮らしているこの街は、自殺者が行くところだとしてもおかしくない。そして、現世に絶望した人が来るところだから、誰も「再生」への希望を持っていないのです。たぶん。 けれど、アンドレアはそうそう絶望して自殺したわけではなくふとした気の迷いであったので、「生の音や匂い」を嗅ぎつけ、再生への道を辿るのです。ラスト近くのバスの貨物室シーンは、そのまんま「誕生」のプロセスであり(ヘソの尾を模したチューブさえある)、「誕生」は「苦痛」であると言っているのです。 そしてアンドレアはまた誰かの赤ん坊として生まれたのです。ということは、私たちは生まれた後はすっかり忘れているけれど、「快適安楽」を捨てても再生したいという自らの意思によって生まれてきたのだということになります。ならば、自殺などすることは、あの時の自分を裏切ることになりますね。…私たちが死んだ後はどうなるのでしょうか。この映画は人類共通の問いへの答えの一種ともいえる。 さてあなたや私があの世界に行ったならば、果たしてアンドレアのように〝戻ってくる〟気になるでしょうか。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-06-06 16:07:25)
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