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《ネタバレ》 週刊文春での小林信彦氏のコラムで、脚本家笠原和夫が自脚本の中で「お気に入り」として挙げていた一本。監督深作+笠原は敗戦後の復興・経済成長において金と権力=強欲が絶対的な価値となってしまった社会への糾弾/恨み節としてこの作品を出したのでしょう。これまた笠原の名作「博奕打ち・総長賭博」で鶴田浩二が兄貴分若山富三郎を刺殺するのはそれぞれの義侠心/任侠道の相違から起こってしまった悲劇で世情はまだ「情」が通用した世界。ところがこの作品で刑事菅原文太が義侠心ある田舎ヤクザ松方弘樹を射殺する行為は単に気のふれた暴れ者への処置、として片付けられた感があり(しかも菅原の好意を松方が裏切ってしまった為、という点がまた切ない)やるせない気持ちにさせる。もうこの社会で義侠心=「情」は通用しないのでしょう。印象的なのは松方や菅原のシーンが全体的に暗く・侘びしいのとは対照的に権力と癒着している新興ヤクザ・成田三樹夫やヤクザ上がりの代議士金子信雄が暗躍しているシーンは妙に明るい雰囲気であること。それはラスト、ヤクザの金で建てられた石油会社に天下りした元エリート警視(戦後の価値観しか理解出来ない)梅宮辰夫が陽光下で行うラジオ体操/地方の警察官に降格され最後は雨の夜の中「消される」菅原文太を撮ったラストショットでいっそう強くなる。いつもの東映実録路線映画のメンツではあるがその中でも遠藤太津朗の「恋人」田中邦衛の存在感と、菅原文太の寂しげな姿態がポイントか。私も「仁義なき~」よりはこっちが好き。
【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 7点(2013-01-05 22:24:57)
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