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《ネタバレ》 弁当屋開業初日、支度中の主人公は何故泣き出したのでしょう。夢を叶えた達成感?納得の弁当を作れた充実感?それとも周りへの感謝の気持ち?どれも違うと思う。彼女が泣いたのは自分の責任を自覚したからだと感じました。小料理屋の主人いわく彼女の手は“子供の手”。それはすなわち“大人の手”ではないということ。無論“親の手”でもない。「そういうの何か嫌なんで」そんな理由で彼女は慰謝料も養育費も求めなかった。ただ働きも喜んでした。心意気は悪くない。でも彼女は自分が置かれた状況を判っていない。おそらくは“家を出た”“行き場所が見つかった”という状況の変化に酔っていたのだと思います。夢を追うのに必要なのは情熱のみ。それが許されるのは子供だけです。大人は違う。ましてや人の親ならば。まず考えるべきは生活の糧を得ること。子供を育てること。夢を追うのは次の話です。真っ当な大人は、間違っても恩人の店で暴れたりしない。子供の権利を放棄したりしない。日が昇る前から調理をはじめ、出来た弁当は20個ほどか。確かに美味しそう。でも採算は取れるのでしょうか。趣味の疲労は苦労にあらず。小遣い稼ぎも似たようなもの。でも家計を担う労働は身にこたえます。責任は重圧に変わり疲労を倍化させる。彼女は身をもって働くことの意味を知ったのだと思います。だから泣けた。価値のある涙でした。親子2人が暮らせる利益が出る弁当を作れて、初めて彼女は弁当屋になるのです。その道は易しくない。でも彼女は母親です。涙の向こうには子供の笑顔がある。頑張れるはずです。一日も早く大人の手を、いや親の手を、手に入れて欲しいと願います。身の程知らず、世間知らず、でも一生懸命だから応援したい。そんな微妙なスタンスのヒロインを小西真奈美は好演しました。演技は上手い。表情のみで魅せられる女優さんだと思います。岸辺も貫禄の存在感でした。小料理屋の主人のような大人になりたいものです。
【目隠シスト】さん [DVD(邦画)] 8点(2011-03-17 18:28:41)(良:3票)
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