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《ネタバレ》 『これがあんたの落とし穴だ』高倉が西野(仮)に吐き捨てた最後の言葉は、鈍痛を伴い胸に響きました。そう、それは高倉自身に向けられた台詞でもあったことでしょう。犯罪心理学を学んでいたが故の慢心が、墓穴を掘る形となった1年前の出来事。そして今一度、最愛の妻をも巻き込んで同じ轍を踏んでしまった愚かな自分。“サイコパスとはこういうもの”そんな決めつけ、思い込みが、最も危険だというのに。講義で学生に「参考にならない」そう自ら口にしていたはずなのに。医者の不養生。幸いにも(?)、西野(仮)もまた今までの獲物と高倉を“同質”と“決めつけた”おかげで、主人公は命拾いしたワケですが。数多く過ちを犯した者が勝利した結末とも言えます。夫の胸で号哭する妻の声は、魔界から現世に戻ってきた証。それはまるで産み落とされた赤子の鳴き声のようでもありました。漆黒の中の救い、と受け取りたいと思います。黒沢清監督の映画にしては、筋立ては明快。お馴染み難解ミステリーを予想していた身としては若干物足りなくも。ただし、監督のもう一つの顔“ホラー上手”の面は、如何なくなく発揮されていました。映像面では、光と影の使い方、画における間の取り方。極め付けは“スタジオ撮り乗用車シーン”でしょうか。ツクリモノ丸出しの感じが、異世界を進む西野(仮)ファミリーの地獄道をよく表していたと思います。また、脚本面では、早紀の身の上に起きた6年前の事象を、西野娘の姿を通じて間接的に知らしめる手法が技ありで、得も言われぬ恐怖と不快感を創出していたと思います。黒沢ホラー、ここに在り、です。今回のMVPは勿論香川照之。怪演でしたが、同じくらい西島の体温低い単調な演技も(氏の平常運転ですが)見事だったと思います。願わくば、手品(人心掌握)のタネは、クスリではなく純粋に西野(仮)の人間力であって欲しかったところです。
【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-05-25 18:29:46)(良:1票)
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