葛城事件 の ちゃじじ さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > カ行
 > 葛城事件
 > ちゃじじさんのレビュー
葛城事件 の ちゃじじ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 葛城事件
製作国
上映時間120分
劇場公開日 2016-06-18
ジャンルドラマ,犯罪もの,戯曲(舞台劇)の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 度重なる不在と欠落の先に導かれる逃れようのない現実。
歪んだ父権主義による、手本となるべき父親の不在。手料理の不在に象徴される母性の欠落。とりとめのない会話、談笑の欠落。食卓を囲み、家族で食事を取るという行為の不在。家族以外の他者、社会との有機的な関係の欠落。
やっとの事で父親から逃れついたアパート。始めてとりとめのない会話が成立し、家族が食卓を囲み、陽光と音楽がその光景を暖かく照らし出す瞬間。
父親が乱入する事で自然光は欠落し、人工的な照明が無理矢理家族を照らし出す。父は次男の心情吐露を遮断し、偽りの甘言を発し、人間を迎え入れる場としてではなく、縛り付ける場として機能する家へ家族を連れ戻し、希望の萌芽は摘み取られる。
その後、一人また一人と成員が欠落していく事で家族は崩壊する。
家族を失い、家という唯一頑なに守っていた中身のない容れ物を壊し、希望の象徴の木で死を迎えようとするも、それすらも成し遂げられなかった後、何事もなかったかのように「食べる=生きる」という本能にすがりつく父親。
作中度々捉えられるローアングルの同一ショットによって、小津的不在の確認なる孤独な男の姿をカメラは映し、それが唯一残った現実である事を静かに提示していた。
そしてその姿は、誰もがそうなり得る可能性を持った存在でもあった。
少なくとも自分は次男に過去の自分を、長男に今の自分を、父親に可能性としての未来の自分を重ね合わせて観てしまった。
ちゃじじさん [DVD(邦画)] 9点(2017-02-19 20:24:13)(良:2票)
ちゃじじ さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2017-12-16君の名は。(2016)5レビュー7.00点
2017-12-13ワイルド・アパッチ9レビュー6.90点
2017-10-28エル・スール9レビュー7.60点
2017-10-23最前線物語7レビュー6.72点
2017-10-14ノスタルジア7レビュー7.02点
2017-09-24ダゲレオタイプの女9レビュー7.25点
2017-09-24SCOOP!5レビュー5.44点
2017-09-22ダンケルク(2017)5レビュー5.98点
2017-09-16三度目の殺人8レビュー6.32点
2017-09-10散歩する侵略者8レビュー6.03点
葛城事件のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS